著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
会社員時代、年末が近づくと「ふるさと納税の枠を使い切らなきゃ!」と駆け込みで寄付をしたり、年明けには「医療費控除のために去年の領収書をまとめなきゃ…」とせっせと電卓を叩いたりするのが、毎年の恒例行事でした。読者の方の中にも、同じようにお得な節税テクニックとして活用してきた方は多いのではないでしょうか。
ところが、FIREを果たして自ら所得をコントロールする側に回ってみると、ある事実に気づきました。
サラリーマン時代の「最強の節税テクニック」だったふるさと納税や医療費控除が、FIRE民にとってはまったく意味をなさないということです。
結論から申し上げると、FIRE民にとって究極の節税とは、控除を必死にかき集めることではありません。「合計所得を43万円以下にコントロールして、あとは何もしない」。
今回は、FIRE後の節税の罠について記事に書いてみたいと思います。
なぜ?FIRE後に「ふるさと納税」を続けると大損する理由
このことに気づいたきっかけは、ふと目にしたあるニュースでした。
東洋経済オンラインの『「ふるさと納税はショッピングではない」…ポータルサイトの手数料にもメス、総務省幹部が語る”原点回帰”の真意』という記事の見出しを目にした時のことです。
サラリーマン時代の私は、「枠を余らせるのはもったいない!」と、前年の所得をもとにギリギリの寄付額を計算しては、毎年10万円を超える額をふるさと納税していました。お米、お肉、果物……たくさんもらえる返礼品に熱狂していたものです。両親や義両親の住所を送り先にして、お歳暮代わりにしていたこともありました。
そんな記事を眺めているうちに、ふとこんな疑問が浮かんだのです。
「そういえば、今まで当たり前のようにやってきたふるさと納税って、FIREした今の自分はどうなるんだろう?」
ふるさと納税の仕組みは、あくまで「自分が払うべき税金の前払い(+寄付金控除)」です。実質2,000円の負担で返礼品がもらえるのは、控除しきれるだけの税金をそもそも払っている、現役会社員だからこそ成り立つ話です。
納める税金がほとんどないFIRE生活者が「なんとなくお得だから」と思考停止で寄付を続けると、寄付額から2,000円を引いた金額がまるごと自己負担になってしまう。そんな現実に、今さらながら気づきました。
FIRE民の最重要課題!国保最安を叶える「43万円の壁」とは
では、なぜ「そもそも払う税金がない」状態になっているのか。
それは、FIRE民にとって最大の敵とも言える国民健康保険料(国保)を最安に抑え込む戦略をとっているからです。
思い返せば、FIRE1年目の確定申告のことです。サテライト的に運用していたソーシャルレンディング9社からかき集めた雑所得が、なんと約120万円にもなっていました。
その年はまだ退職後の任意継続だったため大事には至りませんでしたが、「これ……もし今年から国保に入っていたら、詰んでたな」と、本気で冷や汗をかきました。
それ以来、約2,500万円あったソーシャルレンディングの運用額を徐々に縮小しています。償還された資金は再投資せず、国保の計算に影響しない分離課税のセキュリティ・トークン(ST)や株式へ、せっせとシフトさせている最中です。
その甲斐あって、現在のソシレン運用残高は残り約1,200万円。あともう少しで、雑所得(ソシレンの利益)を目標の年間40万円程度に抑え込めそうです。
では、なぜ「40万円程度」を目標にし、合計所得を「43万円以下」にコントロールすることにこだわるのか。ここがFIRE後の資産防衛における最大のキモです。
日本の税制には、誰でも無条件で所得から差し引ける「基礎控除」が存在します。所得税の基礎控除は「48万円」、そして住民税の基礎控除が「43万円」です(2026年度時点)。
つまり、すべての合計所得をこの「43万円以下」にピタリと収めれば、課税される所得そのものが消滅します。結果として、所得税も住民税もゼロになります。
そして、この「住民税の基準(43万円)」を1円でも超えてしまうと、住民税が発生するだけでなく、その所得額がそのまま国民健康保険料の算定基準に加算されてしまいます。国保料は前年の所得に応じて容赦なく跳ね上がるため、たった数万円所得がはみ出しただけで、翌年の国保料が何万円も上がってしまうという悲劇が起こります。
妻と二人で平穏な生活を送るために、手元の資産を無駄なく守り抜く。そのためには、何が何でもこの「43万円の壁」の内側に所得を押しとどめ、国保を最安(7割軽減など)のラインに抑え込むことが、絶対条件です。
サラリーマンの常識は捨てるべし!FIRE後に待ち受ける2つの「節税の罠」
このように「国保を最安にするための所得コントロール」を徹底すると、会社員時代の節税常識がことごとく通じなくなります。具体的に、どのような罠が潜んでいるのでしょうか。
罠1:ふるさと納税が「ただの割高な寄付」に変わる
前述の通り、住民税も所得税もゼロの場合、ふるさと納税はただの寄付になります。
「だったら、分離課税にしている株式の利益をあえて『総合課税』で申告して、ふるさと納税の枠を作ればいいんじゃない?」と考える方もいるかもしれません。確かに、申告すれば税金が発生し、ふるさと納税の枠は生まれます。
しかし、総合課税で申告して所得を増やすと、その分が国保の計算に加算されます。結果として、「返礼品で数万円お得なつもりが、国保料が十数万円跳ね上がって大損」という悲惨な結末を迎えることになります。
罠2:医療費控除を申告しても税金も国保も安くならない
もう一つの罠が「医療費控除」です。
今年の医療費は年間20万円ほどかかる見込みで、当たり前のように「医療費控除の申請をしよう」と考えていました。しかし、よく考えると気づいてしまったのです。
「あれ……この医療費控除、使っても意味がないのでは?」
すでに合計所得を40万円以下に抑えていて税金はゼロ。いくら控除を申告しても、戻ってくる税金そのものが存在しません。
苦労して領収書をかき集め、Excelに入力し確定申告用の資料を作り上げても、税金は1円も戻らず、国保も1円も安くならない。完全に無駄な労力になります。
「守りのFIRE」がたどり着いた結論:究極の節税は「何もしない」こと
医療費控除を使っても意味がない。ふるさと納税もただの持ち出しになる。
一見すると「なんだか損をしている」「もったいない」と感じるかもしれません。
しかし、これこそが「国保の負担を下げるために合計所得を43万円以下に抑え込む」という最大のミッションをクリアした者だけがたどり着ける境地です。
「あえて何もしない」
これが、制度の壁の内側で資産を守りながら生き残る、地味で確実な”守りのFIRE”の真髄だと実感しています。
もちろん、「何もしない」を実現するためには、源泉徴収ありの特定口座(分離課税)への資金シフトなど、事前の所得コントロールという準備が欠かせません。しかし、その準備さえ整えてしまえば、あとは寝て待つだけで最強の策が自動的に発動する——それがこの戦略の妙味です。
さいごに
今回のポイントをまとめます。
- 会社員時代の節税の常識(ふるさと納税、医療費控除)は、FIRE後には通用しない。
- 国保対策で合計所得を43万円以下に抑えれば、税金ゼロ&国保7割軽減が確定する。
- 税金がゼロの状態で各種控除を申告しても無意味(あるいは損をする)になる。
- 目先の「お得情報」に振り回されず、税制と社会保険の全体像を俯瞰することが大切。
サラリーマン時代の感覚を捨て、FIRE後の新しいルールに頭を切り替えるのは、なかなか骨が折れますね。




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