【レバレッジETFの罠】長期保有で資産が溶ける減価の仕組みと、暴落時の残酷な数学

レバレッジETF 暴落時の残酷な数学 投資の基本

 著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)

SNSや投資系の掲示板を見ていると、「通常の2倍、3倍のスピードで資産が増える!」といったレバレッジ商品に関する話題をよく見かけます。

「これを使えば、もっと早くFIREできるのではないか?」
「相場は結局右肩上がりなのだから、2倍儲かるならずっと持っていればいいのでは?」

そんな誘惑に駆られたことがある方もいるかもしれません。

私も投資歴25年以上の中で、声を大にしてお伝えしたい結論があります。それは、「レバレッジ商品は、40代・50代が老後資金を見据えて『長期運用』するには極めてリスクが高い罠である」 ということです。

この記事では、「日々の2倍」という言葉に隠された本当の意味、資産が目減りしていく「減価」の仕組み、そして暴落時に直面する「回復の残酷な数学」について解説します。

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レバレッジETFとは?「日々の2倍」に潜む長期保有の盲点

「レバレッジ」とは「てこの原理」を意味し、少ない資金で大きなリターンを狙う仕組みのことです。レバレッジETFや投資信託の核心となる特徴は、株価指数の「日々(1日)の値動き」に対して2倍・3倍の動きをする という点にあります。

有名なものとしては、以下のようなものがあります。

  • 米国ETF:SPXL(S&P500指数の3倍)、TQQQ(NASDAQ-100指数の3倍)
  • 日本の投資信託:楽天レバレッジNASDAQ-100(愛称:レバナス)など

「アメリカの株価は長期的には右肩上がりなのだから、2倍や3倍のレバレッジをかけてずっと持っていれば、普通に投資するより絶対にお得なのでは?」と思うかもしれません。しかし、この 「日々(1日)の値動きに対して」 という仕組みこそが、長期保有において最大の盲点となります。

実は私自身、2009年にブログで、当時日本にはまだ上場していなかった米国市場の『2倍で動くETF(UltraETFなど)』について考察した経験があります。シミュレーションを通して「これは長期投資には向かない可能性が高い」と判断し、それ以降はあまり気に留めていませんでした。しかしここ数年、日本でも「レバナス」という愛称で身近な投資対象として流行しているのを見て、強い懸念を抱いています。

相場の荒波を幾度も乗り越えてきた経験から申し上げると、40代・50代の投資において最も恐れるべき事態は、一発逆転を狙うあまり、老後の生活を揺るがすような再起不能のダメージを負うこと です。

▼参考記事:昔運営していたブログの記事
小金持ち父さんの資産設計塾(?)|UltraETF(ダブル・ブルベアファンド)の罠

なぜ長期保有は罠なのか?資産が溶ける「減価(目減り)」のメカニズム

「日々の2倍」が長期保有に向かない理由、それは相場が上下を繰り返す中で資産が自然と削られていく「減価」という現象にあります。

【シミュレーション】横ばい相場でも資産が削られる現象

ある株価指数が10,000円からスタートして、4日間激しく上下したとします。

日付通常の指数(1倍)2倍レバレッジETF
開始10,000円10,000円
1日目9,100円(−9%)8,200円(−18%)
2日目9,555円(+5%)9,020円(+10%)
3日目8,886円(−7%)7,757円(−14%)
4日目10,041円(+13%)9,774円(+26%)

指数は10,041円に回復したのに、2倍レバレッジETFは9,774円にとどまり、元本割れしたままです。「なぜこんなことが起きるのか?」——その答えが、次のメカニズムにあります。

上下動で損をする「非対称性」という罠

下落と上昇には、見落とされがちな非対称性があります。10,000円から10%下落すると9,000円になりますが、9,000円から10%上昇しても9,900円にしか戻りません。元に戻るには、下落率より大きな上昇率が必要です。

レバレッジETFはこの非対称性を2倍・3倍に拡大します。例として、10,000円から1日目に10%下落した場合を見てみます。

  • 通常の指数(1倍):9,000円
  • 2倍レバレッジETF:8,000円(20%下落)

翌日、指数が10,000円に戻るには約11.1%の上昇が必要です。このとき2倍レバレッジETFはその2倍、約22.2%上昇しますが、

  • 2倍レバレッジETF:8,000円 × 1.222 = 約9,776円

指数がぴったり元値に戻っても、レバレッジETFは元本を回復できません。これが「減価」の正体です。

相場は一直線に上がり続けるわけではなく、何ヶ月・何年とボックス相場が続く時期が必ずあります。指数が横ばいの間も、レバレッジETFの価値はじわじわと削られていくという罠が潜んでいます。

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40代・50代がレバレッジ投資を避けるべき2つの決定的要因

減価のメカニズムに加えて、レバレッジ商品を長期運用すべきではない理由がさらに2つあります。

1. 暴落時の「致命傷」と恐ろしい繰上償還(解散)リスク

長期投資をしていれば、必ず「〇〇ショック」と呼ばれる暴落に遭遇します。そのとき立ちはだかるのが、回復の残酷な数学です。

仮に100万円を投資していて、-30%という暴落が起きたとします。

下落後の資産元に戻るために必要な上昇率
通常の指数(−30%)70万円約+43%
2倍レバレッジ(−60%)40万円約+150%
3倍レバレッジ(−90%)10万円約+900%

暴落時のダメージが致命傷となり、回復に絶望的な時間がかかることがわかります。

これは机上の計算ではありません。

実際の私はリーマンショックを経験しましたが、S&P500指数は2007年10月の高値(約1,565ポイント)から、リーマンブラザーズ破綻を経て2009年3月の底値(約676ポイント)まで、約57%下落しました。この期間に100万円を投資していた場合、現物のS&P500インデックスファンドでは約43万円にまで目減りします。痛手ではありますが、市場に踏みとどまり、その後の回復を待つことができました。

では、3倍レバレッジETFではどうだったでしょうか。ちなみにSPXLといった代表的な商品はリーマンショック当時にはまだ設定されていなかったため、これは過去の指数データに基づくシミュレーションです。

「単純な下落率57%の3倍=171%下落」にはなりませんが、同期間の最大ドローダウンは約96〜97%に達したと算出されています。つまり、100万円が3〜4万円にまで消え去る計算です。

現物インデックスであれば「半値ダメージ」で踏みとどまれるところを、レバレッジ商品は元本が回復不可能な水準まで破壊されてしまう——リーマンショックの歴史は、そのことを如実に物語っています。

さらに恐ろしいのは、ファンド消滅のリスクです。指数が1日で34%下落した場合、3倍レバレッジETFは計算上の価値がゼロとなり、強制繰上償還(解散)に追い込まれる可能性があります。

もちろん、米国などには「サーキットブレーカー」(相場が急変した際に取引を一時停止する仕組み)があるため、1日で34%下落することは現実的ではありません。しかし、1987年のブラックマンデーではS&P500が1日で20.5%暴落し、直近では2024年8月に日経平均が1日で4,451円安(下落率12.40%)を記録しています。1日の下落が制限内であっても、数日間連続で暴落が続けば、レバレッジ商品が実質的な退場へと追い込まれるリスクは十分にあります。

2. 複利効果を殺す「高額な運用コスト(信託報酬)」

レバレッジ商品は、先物取引などのデリバティブを使って運用されるため、一般的なインデックスファンドと比べて信託報酬が大幅に高くなります。

一般的なS&P500インデックスファンドの信託報酬は年率0.1%前後ですが、2倍レバレッジETFでは年率1%前後かかることが多く、約10倍のコストを支払い続けることになります。この差は短期間では気になりませんが、10年・20年と保有を続けるほど、ボディブローのようにじわじわとリターンを削っていきます。

まとめ|40代・50代の資産形成は「致命傷」を避け、相場に居座り続けることが最優先

レバレッジ商品は精神的にも数学的にも、あまりに大きなリスクを伴います。投資において最も強力な勝ち筋は「相場から退場しないこと」です。

もちろん、レバレッジ商品自体が悪というわけではありません。しかし、それはあくまで「短期的なトレンドに乗って利益を狙うための戦術的なツール」として明確に割り切るべきものだと思います。

老後に向けたコアな資産形成は、全世界株式やS&P500などの王道インデックスファンドをどっしりと保有し続けることが、結局は一番の近道です。

私自身も「攻め」から「守り」へと投資スタイルを切り替えました。堅実なインデックス投資や「3つのバケツ戦略」については以下の記事にも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

▼参考記事


※本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

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