著者:モンチ(投資歴26年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
最近、SNSや投資仲間との会話の中で「確定申告をしなくても、特定口座の利益を把握されて保険料が上がるようになるらしい」という話題をよく見かけるようになりました。
「2029年から株の儲けのせいで、病院代が高くなるって本当?」
「確定申告しなくても特定口座の利益が国にバレるなら、何もしないと大損するの?」
そんな不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
実は、この新ルールには有力な防衛策があります。それは、「NISA優先の取り崩し」 と74歳までの「計画的な利確・買い直し」 を行うことです。これらを徹底すれば、老後の医療費や保険料の増加を抑えやすくなります。
今回は、2029年から始まる新しい医療費ルールへの対策を、具体的なシミュレーションを交えてわかりやすく解説していきます。
2029年金融所得改正とは?特定口座の利益が医療費・保険料に反映へ
法改正(2026年6月公布)により、特定口座で出た株式や投資信託の利益が、確定申告の有無に関わらず75歳以上の医療費窓口負担(1〜3割)や保険料の算定に反映される仕組みが導入されることになりました。
スケジュールについては、厚生労働省が2026年10月16日の社会保障審議会 医療保険部会(第218回)で、2029年1月に金融機関から広域連合へのオンライン提出が義務化され、同年8月(2028年分の所得)から窓口負担などへ初めて反映するという案を示しています。
ひとことで言えば、「確定申告をしなくても、特定口座の投資益が国に把握され、医療費や保険料の引き上げに反映されてしまう」という制度変更です。
対象となるのは、特定口座や一般口座で運用している株式、投資信託、債券の売却益や配当金です。一方で、NISA口座での利益や配当、銀行預金の利息は対象外となり、影響は全くありません。詳細は厚生労働省の医療保険制度に関するページなどでも確認できます。
【注意】75歳未満の国保や非課税世帯への影響は?
「それでは、住民税も上がって非課税世帯から外れるの?」と心配になるかもしれませんが、今回の改正で直接変わるのは 「75歳以上の後期高齢者医療制度」 です。住民税や非課税世帯の判定が今すぐ変わるわけではありません。また、75歳未満の方の病院代がすぐに変わることもありません。
ただし、将来的に私のようなFIRE民が入る国民健康保険や介護保険へ対象が広がる可能性は、国会等でも議論されています。だからこそ、どの制度変更にも強いNISA口座に資産を集約しておく意味が極めて大きいのです。
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単に利益を出すだけでなく、国保や医療費への波及を意識することの重要性についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
確定申告で税金を取り戻す?還付狙いの「思わぬ落とし穴」
まず前提として、これは75歳以降の話です。75歳未満の方は、今すぐ申告の要否が変わるわけではありません。
75歳以降は、申告不要制度を選んでいても結局所得として捕捉されてしまうため、「申告しないほうが保険料の面で有利」という前提は崩れます。
そこで考えられるのが、あえて確定申告を行うことで、損益通算や過去の損失の繰越控除、あるいは配当控除を活用し、「税金の還付」を純粋に狙いに行くという選択肢です。どうせ医療費の判定に組み込まれるなら、取られすぎた税金を取り戻す手続きをした方がトータルでプラスになるケースも出てきます。
しかし、この「税金還付」だけに目を奪われると痛い目を見ます。他の控除との兼ね合いには細心の注意が必要です。
実際に私自身、退職初年度に良かれと思って外国税額控除などの確定申告を行ったところ、全体の所得判定が変わり、なんと配偶者控除が激減してしまうという思わぬ落とし穴にはまりかけました。(幸い、法定申告期限内に気が付いたため、確定申告を取りやめて事無きを得ました)
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確定申告を行う際は他の控除との兼ね合いに注意が必要です。私のリアルな失敗談はこちらをご覧ください。
有力な防衛策は「74歳での利確・買い直し」!医療費・保険料の増加を抑えるカラクリ
新ルールを踏まえた上で、特定口座の資産を守る有力な防衛策となるのが 「74歳の時点での利確・買い直し」 です。
75歳以降に特定口座の資産を売却して大きな利益が出ると、医療費の窓口負担が2割・3割に上がるリスクがあります。窓口負担は年金などの所得に応じて1割・2割・3割の3段階に分かれていて、3割になるのは現役並みの所得がある場合です。その手前に2割の区分もあるため、ご自身の年金額によって、どの区分になるかは変わってきます。
そこで、74歳のうちに一度すべて売却して税金(20.315%)を精算し、すぐに買い直して「取得単価」を高く引き上げておきます。これにより、75歳以降に売却した際の確定利益を小さくでき、窓口負担の上昇を抑えやすくなります。
「でも、74歳で一気に売ったら、その年の税金や保険料が高くなるのでは?」と心配されるかもしれません。
ご安心ください。74歳時点(75歳未満)であれば、特定口座(源泉徴収あり)で売却して確定申告をしなければ(申告不要制度を選択すれば)、その売却益が自治体に通知されることはありません。税金だけがその場で天引きされて完結するため、翌年の国民健康保険料や医療費負担が跳ね上がる心配はないのです。
だからこそ、75歳になる手前の「74歳」というタイミングが絶好のチャンスとなります。
私は54歳なので、74歳まであと約20年あります。だからこそ、今のうちに仕組みを理解しておきたいと考えています。
【12年間シミュレーション】74歳利確 vs 何もしない場合
具体的なシミュレーションを見てみましょう。74歳男性の平均余命(約12年)にあたる86歳までの12年間で計算します。
<前提>
- 74歳時点で資産2,000万円(元本1,000万円+含み益1,000万円)
- 利回り年4%(税率20.315%)
- 期間12年間
| 項目 | パターンA 何もしない(86歳で一括売却) | パターンB 74歳で一度売却して買い直し |
|---|---|---|
| 74歳時点の税金 | なし | 約203万円 (残り1,797万円で再投資) |
| 86歳時の評価額 | 約3,202万円 | 約2,877万円 |
| 利益(課税対象) | 2,202万円 | 1,080万円 |
| 86歳時の税金 | 約447万円 | 約219万円 |
| 手残り | 約2,755万円 | 約2,658万円 |
比較すると、手残りの差(運用上のロス)は 「約97万円のマイナス」 となります。先に税金を払うと、その分『お金を増やすパワー(複利効果)』が少し減る損が生じるわけです。
一方で、Aのまま75歳を迎えると、特定口座の利益が毎年の判定に加わり、病院代と保険料の両方が増える可能性があります。私の試算では、12年間で150万〜300万円ほど膨らみます。
医療費・保険料増の恐怖…年間負担はいくら増える?
仮に75歳以降、生活費の足しとして特定口座から毎年100万〜200万円ほどの利益を出し続けたケースで考えてみましょう。ここでは、負担がもっとも大きくなる「1割→3割」になった場合で試算します。
- 病院代の増加(1割→3割負担)
医療費の負担割合が20%分上乗せされます。高齢になれば通院の機会も増えますから、もし医療費の総額(10割分)が年間15万〜75万円かかったとすると、自己負担の増加分は年間3万〜15万円になります。(2割にとどまる場合は、この増加分は約半分になります) - 保険料の増加(所得割)
確定申告不要で済んでいたはずの利益が算定に組み込まれることで、利益の約9〜11%(※都道府県により異なります)が後期高齢者医療保険料にそのまま上乗せされます。これが年間約9万〜20万円の増加につながります。
これらを合計すると、年間約12.5万〜25万円の負担増。これを75歳から86歳までの12年間にわたって払い続けると、チリも積もって合計約150万〜300万円もの痛い出費になってしまうのです。
つまり、負担が最大になるケースの試算では、97万円の運用ロスを払ってでも、74歳で買い直しておいた方が、医療費などのコスト削減効果によって 「50万〜200万円以上」トータルの手残りが多くなる計算 です。これは、75歳からの病院代のガード料として、あらかじめ税金を払っておくイメージです。
目先の税金支払いを嫌ってあえて負担増を受け入れると、トータルで損をする可能性があります。ただし、2割・3割になるかどうかは年金額などによって人それぞれです。ご自身の見込みで確認してみてください。
【注意】50代・60代での早期利確はNG!複利の力を逃すな
「それなら、今のうちに全部売ればいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、若い段階での一括利確は大損につながります。
先ほどのシミュレーションを、55歳で利確して買い直した場合(86歳までの運用期間31年)で計算してみましょう。
55歳の時点で税金203万円を先払いしてしまうと、その203万円が本来生み出すはずだった複利の効果が31年間も失われます。結果として、86歳時点での手残りの差額は「約384万円のマイナス」という巨額の運用ロスに膨れ上がってしまいます。
したがって、現役世代のうちは 「必要になるまで売らない(課税の繰り延べ)」 が鉄則です。防衛策を発動するのは、あくまで75歳が目前に迫った74歳のタイミングがベストです。
50代から始める資産防衛!損しないための3つの基本ルール
細かなシミュレーションや計算が苦手な方でも、以下の3つのルールさえ守れば、資産寿命をしっかり延ばすことができます。
1. まずはNISA枠を優先して埋める
NISA口座での利益は、いくら儲けても医療費や保険料の判定には影響ゼロです。現行の制度において、NISAは最強の防衛策と言えます。
2. 特定口座の資産は一気に売らず「毎年少しずつ」売る
ドカンとまとめて売らず、毎年少しずつ分けて売ることで、1年あたりの所得を低く抑えられます。これを「平準化」と呼びますが、国保料の急激な上昇や医療費の負担増を防ぐ効果的なテクニックです。
3. NISA枠の復活を活用する
NISA枠(生涯投資枠1,800万円)がすでに埋まっている場合でも、老後にNISA資産を取り崩せば、翌年にはその分の枠(最大年間360万円まで)が簿価(購入時の元本ベース)で復活します。この復活した枠を利用して、特定口座にある資産を少しずつNISAへ引っ越しさせていくのが賢い戦略です。
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特定口座から優先して取り崩し、NISAを最後まで守るという具体的な取り崩し順序の全体像は以下の記事で詳しく解説しています。
さいごに
今回は、2029年からの医療費・保険料の新しいルールと、資産を守るための具体的な手順について解説しました。
- 2029年8月から、75歳以上の医療費負担・保険料に特定口座の利益が(確定申告の有無に関わらず)反映される予定。NISAは対象外
- 74歳での「特定口座の利確・買い直し」は有力な防衛策。最大ケースの試算では、97万円の運用ロスより、150万円以上の医療費・保険料の増加を避けられる
- 若い時の利確は厳禁。現役世代はNISA枠の活用と「少しずつ売る(平準化)」を徹底する
制度や税金の手続きは、仕組みをしっかり理解して計画的に動かないと損をします。制度改正に慌てず、今から少しずつ「守りの出口戦略」を組み立てていきましょう。
PS
皆さんは、将来の医療費や社会保険料の上昇に対して、どのような対策を考えていますか?ぜひコメント欄で教えてください!
この記事のシミュレーションは、前提条件(資産額・利回り・期間・年金額など)によって結果が変わります。制度の詳細や施行時期は今後変更される可能性もあります。投資や税金の判断は、ご自身の責任で行ってください。





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