暴落で「買えない」のは本能。リーマンショックで犯した私の痛恨のミス

暴落で買えない本当の理由 投資の基本

 著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)

2026年6月末には日経平均株価が7万2,000円台という史上最高値を更新してイケイケの雰囲気だったのも束の間、直近では6万4,000円台まで急落。SNSを開けば「半導体株の下落で大きなダメージをくらった」「含み益が幻になった」という悲鳴が飛び交っています。

こういう時、狼狽売りを避け、下がった時は絶好の買い場と考えていく姿勢が大切です。しかし、頭では分かっているのに、いざ暴落を目の当たりにすると怖くて買いボタンが押せない……あるいは「もう全部売ってしまいたい」という衝動に駆られてしまう。そんな自分に対して「自分は投資に向いていないんじゃないか」「意志が弱い」と自己嫌悪に陥っている方もいるかもしれません。

でも、安心してください。暴落時に買えないのは、あなたの意志が弱いからではありません。それは学術的に証明された「人間の本能」なのです。

53歳で退職し、2025年に念願の完全FIREを達成した私ですが、投資歴25年の中で数々の暴落を経験してきました。そして、偉そうなことを言っていますが、過去には「暴落の恐怖に負けて絶好の買い場を逃す」という大失敗もやらかしています。

今回は、私自身の過去の痛恨のミスと「行動経済学」の視点を交えながら、暴落の恐怖をコントロールし、相場の荒波を乗り越えるための「心とルールの備え方」について記事にしたいと思います。

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株の暴落時にどう動くべきか?私が直近の下落相場で実践した「感情を排したリバランス」

まず、直近の相場において、私がどう動いたかをお伝えします。

結論から言うと、私は相場のノイズやSNSの悲鳴は、いったん横に置いておいて、ルール通りに淡々と国内株式のETFの買い増し(リバランス)を行いました。

先週末に保有資産の配分を確認したところ、TOPIXが他の資産に比べて目減りしていることに気づきました。そこで判断したのは、「下がったから怖い」でも「これから上がりそうだから買う」でもなく、あらかじめ決めていた資産配分に戻すだけの、いたって機械的なリバランスです。休みの間にTOPIX連動のETFを成行で買い注文を出しました。

相場が高値圏なのか、まだ上がる余地があるのかは、正直なところ誰にもわかりません。だからこそ、感情を挟まず「アセットアロケーションが崩れたら、決めたとおりにリバランスをする」ことに徹しています。

あらかじめ決めた配分に戻すだけの、ただの「機械的な作業」です。投資で一番大切なのは、市場から退場しないためのメンタル管理であり、そのためには感情を排除したルールが最強の武器になります。

しかし、私も最初からこんな風に冷静に動けたわけではありません。昔は感情に振り回されて、大きな失敗をしたことがあります。

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暴落で「買えない」リアルな現実。2008年リーマンショックでの私の痛恨のミス

頭では「絶好の買い場」だと分かっていても、いざその場に立つと恐怖で指が動かなくなる。それが人間のリアルです。

時計の針を、2008年の秋〜冬に戻します。

いわゆる「リーマンショック」の真っ只中です。当時の日経平均株価は8,000円を割り込み、為替は1ドル90円台前半という急激な円高が進行していました。

今振り返れば、まさに「歴史的バーゲンセール」です。当時の私も、本などで勉強して「ドルコスト平均法」や「バイ&ホールド」が長期投資の基本戦略であることは重々承知していました。冷静に考えれば、間違いなく「買い」の局面だったのです。

しかし、実際の私はどうだったか。

当時の私のブログ記事「失敗したかも、判断ミスでした(汗)」には、当時の生々しい後悔が綴られています。

「今月27日にバブル最安値を切ったのでTOPIX ETFを少し買い増しました。しかし、今月の投資予定額の1/3だけしか買いませんでした。残りは海外株式に投資しようと思っていたのですが、FOMC終了&米国GDP発表後に先延ばししました。」

(略)

その結果、

27日 ダウ:8200ドルぐらい? ドル円:93円ぐらい? の絶好の買い場を逃してしまいました。現在、ダウ9000ドル、ドル円:98円ですので、株価で10%、為替で5%の収益を逃したことになります(^^; いやー、後から考えると勿体ないですね。

引用:失敗したかも、判断ミスでした(汗)|小金持ち父さんの資産設計塾

そう、私は買えなかったのです。

「もっと下がるかもしれない」「底値を見極めたい」という恐怖とスケベ心から、投資予定額の1/3しか資金を投入できませんでした。

タイミングを計ろうとした結果、その数日後に起きた株価の反発(年1度あるかないかの大上昇局面)に乗り遅れ、株価で10%、為替で5%の収益機会を丸々逃してしまったのです。

ブログでは理路整然と書いていましたが、本音を言えば「底なし沼に引きずり込まれるような恐怖」に足がすくんでいただけなのです。

タイミングを見て高値で売り、底値で買うなんて芸当は、プロでも不可能です。基本を守らなかった天罰として、私は長期投資における大きなリターンを取りこぼすという手痛い授業料を払うことになりました。

なぜ株価暴落の「絶好の買い場」で買えないのか?行動経済学で紐解く2つの理由

なぜ、頭では正しいとわかっていても、体が動かなくなるのか。これは意志の弱さの問題ではなく、人間に備わった心理的なクセとして、行動経済学でも説明がついています。

ここで、投資行動を紐解く上で非常に重要な「行動経済学」の2つの概念をご紹介します。

買えない理由1:プロスペクト理論(利益より損失の恐怖を2倍感じる)

一つ目は「プロスペクト理論」です。2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンらが提唱した有名な理論なので、聞いたことがある方もいるかもしれません。
※参考:
プロスペクト理論 – Wikipedia
Prospect Theory: An Analysis of Decision under Risk

簡単に言うと、人間は「利益を得る喜び」よりも「損失を抱える苦痛」を約2倍以上も強く感じる生き物だということです。

暴落時に「安く買えるチャンス(利益)」が目の前にあっても、私たちの脳は「ここからさらに下がって、自分の大切な資産が減ってしまうかもしれない(損失)」という恐怖の方を過大評価してしまいます。

結果として、合理的な判断(買い増し)ができなくなり、損失を回避しようとフリーズしてしまうのです。

買えない理由2:ハーディング現象(SNSの悲鳴と同調してしまう群集心理)

二つ目は「ハーディング現象(群集心理)」です。

これは、市場全体がパニックになり、SNSやニュースで「株価急落!」「半導体バブル崩壊か!?」といった悲観的な情報があふれ返ると、個人の合理的な思考が「群集の心理」に飲み込まれてしまう現象を指します。
※参考:
ハーディング現象 – 大和証券 金融・証券用語解説
Herd Behavior in Financial Markets

人間には「みんなと同じ行動をとっていれば安心だ」と同調する本能があります。SNSで「みんなが売っている」「含み損に耐えられない」という阿鼻叫喚を見ると、「自分も早く売って逃げなきゃマズいんじゃないか」という錯覚に陥ります。

自分の分析やルールを無視して、群集と一緒に崖に向かって走り出してしまう。これがハーディング現象の恐ろしさです。

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暴落の恐怖を乗り越え、冷静に買い増すための対策ルール

ただ、「買えないのは本能なら、仕方ないよね」で終わってしまっては、資産運用は成功しません。この本能に打ち勝ち、暴落時でも冷静に行動するための事前準備が必要です。

その最大の武器こそが、「事前のシミュレーション」と「ルール化」です。

暴落が起きて、目の前で資産残高がゴリゴリと減っていくのを見ながら「どうしよう」と考えても手遅れです。パニック状態の脳では、絶対に正しい判断はできません。

だからこそ、平時のうちに、今回ご紹介した行動経済学の知識を頭に入れ、「暴落時の自分の感情」をシミュレーションしておくことが大切なのです。

もし今後、再び大きな暴落が来て恐怖に襲われた時。

事前に知識があれば、「あ、今の自分はプロスペクト理論に支配されて、損失を過大に怖がっているな」「SNSの悲鳴を見てハーディング現象に飲み込まれそうになっているな」と、自分自身の心理状況を客観視することができます。

この「客観視」ができるだけで、恐怖はスーッと引き、冷静さを取り戻すことができるのです。

その上で、あらかじめ「自分の許容できる現金比率」を確保し、「目標とするアセットアロケーションから〇%乖離したら、機械的にリバランスする」というルールを設定しておくことが大切です。

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さいごに

今回の記事のポイントをまとめます。

  • 過去(リーマンショック時)には、底値を当てようと恐怖に負け、予定額の1/3しか買えないという判断ミスを犯しました。
  • 暴落時に買えないのは意志の弱さではなく、「プロスペクト理論(損失回避)」や「ハーディング現象(群集心理)」といった人間の本能です。
  • その本能を乗り越える最強の盾は、事前の「感情のシミュレーション」と「ルールの設定」です。

相場の下落は、投資を続けていれば必ず定期的にやってくる「ストレステスト」のようなものです。タイミングを計る投資は、過去の私のように失敗する確率が高くなります。

だからこそ、自分の心とポートフォリオにしっかりと備えをしておきましょう。

皆さんは最近の下落相場で、心は動揺しませんでしたか? 今週末にでも、ぜひ一度ポートフォリオを見直して、必要であれば感情を排したリバランスを行ってみてください。

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