第135回 近鉄社債(Les Saveurs 志摩)は買い?利回りとデメリットを徹底評価

近鉄社債(利率2.45%+5000pt)】を徹底解剖 金融商品

 著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)

「100万円預けたら5,000ポイントもらえるって!しかも金利も2%超えてる、絶対お得」
SBI証券のページを眺めながら、そう思いました。

今回取り上げるのは、近鉄グループホールディングス株式会社 第135回無担保社債(愛称:Les Saveurs 志摩 運行記念債)です。近畿日本鉄道という、関西圏に住む者なら誰もがお世話になっているインフラ企業の名前が冠せられ、さらに必ずもらえる5,000ポイントの特典まで付くとなれば、心が動きました。

ただ、25年以上の投資経験と、FIRE達成後に「守りの投資」に舵を切った身としては、直感だけで資金を動かすのは禁物です。

本記事では、このポイント特典を年率換算し、「格付け別の市場平均利回り」と突き合わせることで、「本当にお得なのか」を冷静に検証します。結論を先にお伝えすると、「相場より高い」と「お得」は必ずしもイコールではありません。ぜひ最後までお付き合いください。

スポンサーリンク

【第135回】近鉄社債(Les Saveurs 志摩)の条件・格付け・利回り相場を徹底比較

まず、今回の債券のスペックを整理しておきます。

項目詳細
商品名近鉄グループホールディングス株式会社 第135回無担保社債
(近畿日本鉄道株式会社保証付および社債間限定同順位特約付)
(愛称:Les Saveurs 志摩 運行記念債)
発行体近鉄グループホールディングス株式会社
保証近畿日本鉄道株式会社 保証付
満期(期間)5年
格付けA-(JCR)/ BBB+(R&I)
利率(仮条件)年2.150%~年2.750%(税引前)
お申し込み単位10万円以上、10万円単位
お申し込み期間7/10(金)11:00~7/23(木)14:00 (SBI証券の場合)
発行額50億円

※詳細はSBI証券の該当商品ページをご確認ください。

そして、気になる利率ですが、仮条件の中央値は年2.450%です。

「2%超えなら高い!」と感じるかもしれません。大手銀行の定期預金と比べれば、雲泥の差です。ただ、投資の世界では「同等のリスクを背負った場合の市場相場」と比較しなければ、本当の損得は見えてきません

そこで、公開されている指標を見てみましょう。現在の5年債の市場平均利回りは、JCRのA格で2.744%、R&IのBBB格で2.919%となっています。
(出典:日本証券業協会:公社債店頭売買参考統計値/格付マトリクス表

今回の近鉄社債の格付けは「A-(JCR)/ BBB+(R&I)」。この市場平均と比べると、仮条件中央値の2.450%は相場より約0.3%〜0.47%ほど低い水準に設定されていることがわかります。

罠に注意!5,000ポイント還元を含めた「実質利回り」を冷静に計算する

今回の近鉄社債には、100万円以上の購入者全員にKIPSポイントが5,000ポイント付与されるという特典があります(特典申込用WEBアンケートへの回答が必要です)。

KIPSポイントは近鉄グループ共通のポイントで、特急券への交換や約500店舗のグループ加盟店で使えるものです。5,000ポイント=5,000円相当と考えると、「お得!」と思いたくなります。

100万円に対して5,000円相当ですので、実質的に0.5%のボーナスがもらえる計算になります。

しかし、この「0.5%」という数字には注意が必要です。1回限りの特典を正しく評価するには「年率換算」が欠かせません。この手順を踏まないと、いつの間にかお得感だけで判断してしまいます。

計算方法は至ってシンプルです。

  • 投資金額:100万円
  • 特典:5,000ポイント(5,000円相当)
  • 運用期間:5年
  • 年率換算:5,000円 ÷ 5年 ÷ 1,000,000円 = 年0.1%相当

なお、KIPSポイントは利子ではないため、通常の債券利息と異なり源泉徴収の対象外となる点は、小さな隠れメリットではあります。

とはいえ、実質利回りは「2.450% + 0.1% = 2.550%相当」。これでもJCRのA格平均2.744%には届きません。

「ポイントが付いてもまだ相場より低い」というのが現実です。

補足として、購入者の中から抽選で「Les Saveurs 志摩」ペア乗車券(フレンチコース)が当たるキャンペーンもあります。「もし当たったら、日頃の感謝を込めて妻を豪華ランチに誘う…」と、取らぬ狸の皮算用をしながら、ひっそり期待している自分もいます(笑)。まあ、私のくじ運の悪さからして当たらないとは思いますが、こうした「ちょっとしたワクワク」が味わえるのも、単なる数字の羅列ではない事業会社債の面白いところですね。

利回りが低い真の理由:「近鉄」のブランド力と子会社保証という安心料

では、なぜこの社債の利回りは市場相場より低く設定されているのでしょうか。理由は明確です。

今回の社債には、近畿日本鉄道株式会社による連帯保証が付いています。

近鉄グループは鉄道事業だけでなく、不動産(あべのハルカス等)やホテル、百貨店など多角的な収益基盤を持つ企業グループです。もちろん、投資の世界に「絶対に潰れない会社」はありません。ただ、今回の連帯保証人である近畿日本鉄道は、JRを除く日本の鉄道会社で最長を誇る巨大ネットワークを持ち、社会インフラを担う企業です。仮に親会社(HD)の業績が傾くような事態が生じても、鉄道事業が機能している限り、元本や利息の支払いは守られやすいという強固なセーフティネットが敷かれています。一般の事業会社の社債とは、信用力の次元が異なります。

投資において「安心(元本割れリスクの低減)」はお金を出して買うものです。市場相場との利回り差(約0.3〜0.47%)は、その安心に対して支払う”保険料”のようなものと捉えることができます。

スポンサーリンク

総資産2億円・FIRE達成者の最終結論:個人向け国債(5年固定)とどっちを買う?

では、「相場より低い」という事実を踏まえた上で、私はこの社債をどう評価するのか。

比較の基準として、現在の絶対安全資産「個人向け国債(5年)の直近利率:年1.860%」を置いてみます。100万円・5年で運用した場合の概算利息(税引き後・単利計算)を比べると、次のようになります。

商品5年間の実質手残り(税金20.315%控除後)
個人向け国債
(5年固定:1.860%)
約74,100円
近鉄社債
(仮条件の中央値:2.450%の場合)
約97,600円+5,000pt(合計約102,600円相当)
差額約28,500円相当

個人向け国債と比べると、5年間で実質的に約28,500円分多く受け取れる計算になります。

確かに、金額だけを見れば近鉄社債の勝利です。さらに今回は、豪華フレンチコースが楽しめる「Les Saveurs 志摩」のペア乗車券が当たるかもしれないというワクワク感(宝くじ要素)も、運行記念債ならではの魅力です。

もちろん、個人向け国債は元本が国に保証されており、実質的にリスクゼロの資産です。一方、近鉄社債は発行体の経営悪化による元本割れリスクがゼロではありませんが、近畿日本鉄道の保証があるとは大きいといえると思います。

その上で私自身の結論としては、ポートフォリオへの組み入れは「アリ」と判断しています。

理由はシンプルです。大阪で生活している私にとって、KIPSポイントは日常の買い物で確実に使い切れます。「国債より3万円弱多く利息を受け取りながら、生活費をわずかに浮かせる」という組み合わせは、守りの投資フェーズにいる私にとっての堅実な防衛策として十分に機能するからです。

ただし、これはあくまで大阪・奈良・三重など近鉄グループが生活圏に密着している関西圏在住者にとっての判断です。KIPSポイントをほとんど使わないエリアにお住まいの方は、特典の実質的な価値が下がるため、最終的な判断は変わってくるでしょう。

まとめ

  • 近鉄社債(Les Saveurs 志摩 運行記念債)の仮条件中央値は年2.450%
  • KIPSポイント5,000ポイント(5,000円相当)を年率換算すると+0.1%相当、実質利回りは2.550%相当
  • ただし、同格付け・同年限の市場平均(JCR A格:2.744%、R&I BBB格:2.919%)と比べると相場より低い
  • 利回りが低い理由は近畿日本鉄道株式会社の債務保証という強力な安心料
  • 関西圏在住でKIPSポイントを日常使いできる方なら、組み入れとしてアリ

なお、申込開始はSBI証券が7月10日(金)11:00~楽天証券が7月10日(金)9:00~の先着順です。発行額は50億円と比較的大きめのため、即完売となる可能性は低いと思われますが、ご検討の方は事前に買付余力を確認しておくと安心です。


※本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました