著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
FIRE界隈のWEBサイトやYouTubeなどを見ていると、「オルカンやS&P500などに投資して、毎年4%ずつ取り崩せば一生安泰」という、いわゆる「4%ルール」をよく目にします。
でも、日本に住んで円で生活している私たちにとって、「本当に米国発のルールをそのまま信じていいの?」と心の奥底で不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。現在の投資環境を使えば、4%ルールの再現はある程度可能です。
しかし、「国内資産(日本株+日本国債)」のみに頼った場合、安全な取り崩し率は「2.5〜3%」、超長期の検証の場合では「0.47%」にまで低下するという残酷な事実が学術データから判明しています。
今回は、投資歴25年、リーマンショックを経験しながらも生き延び、インデックス投資と社債の組み合わせで完全FIREを達成し、現在は取り崩し率2%弱で生活している54歳の実体験も交えながら、解説していきます。
FIREの「4%ルール」は日本でも可能?米国資産(米国株+米国債)なら再現できる理由
まず結論から言うと、投資信託などを活用して「米国株75%:米国債25%」のようなポートフォリオを組み、米ドルベースで4%を取り崩していく戦略をとれば、4%ルールをある程度再現することは可能だと考えています。
なお、この「4%ルール」の元になっているトリニティ・スタディそのものの詳しい中身については、過去の記事でも触れていますので、あわせて参考にしてみてください。
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「でも、円で暮らす自分には為替の影響が出るのでは?」と思う方もいると思います。
しかし、長期的に見るとインフレ率と円の価値の関係には相関(購買力平価)があります。米国でインフレが進めば、長い目で見て円高・円安がそれを調整する方向に働くため、日本のインフレ率を考慮した日本円ベースでも、長期で見れば概ね4%前後の資産が残るはずだ、というのが理屈です。
ここまで読むと、「じゃあやっぱり米国株だけ買っておけばいいんじゃないの?」となりますが、全資産を為替リスクにさらし続けるというのは、精神的にはなかなか過酷なものです。
だからこそ、「もし日本の資産(日本株+日本国債)だけで乗り切るとしたらどうなるのか?」というシナリオを想定しておくことも、守りの投資家としての最低限の防衛線だと強く感じています。
失敗確率に震える…学術データが暴く「日本資産での4%ルール」の残酷な現実
では、実際に日本の過去データで検証すると、どうなるのか。
結論から言うと、戦前まで含めての検証だと「0.47%」、戦後の安定期のみの検証でも「2.5〜3%」が限界というのが、学術データが示す現実です。
「0.47%なんて、戦争があった時代の話なんだから参考にならないでしょ?」と感じる方もいるでしょう。確かにその通りです。しかし、過去に起きた事実である以上、最悪のシナリオとして頭の片隅に置いておくべき数字だとは思います。
とはいえ、あまりにも特殊な条件下でのデータであるため、戦後の安定期以降のデータについても併せて見ていきます。
【戦前の最悪期】日本の取り崩し率は世界ワーストの「0.47%」
まず戦前のデータです。米国で2010年に発表された論文では、1900年から2008年までの109年間、世界17カ国の株式・債券データを使って、各国の「早期リタイア後に安全に取り崩しできる資産の率」が検証されています。
※参考:Pfau, Wade D.(2010)”An International Perspective on Safe Withdrawal Rates: The Demise of the 4 Percent Rule?” Journal of Financial Planning
検証結果の一部を抽出すると以下のようになります。
| 国名 | 最悪期の取り崩し率 | 最悪期の年 |
|---|---|---|
| カナダ | 4.42% | 1969年 |
| スウェーデン | 4.23% | 1914年 |
| デンマーク | 4.08% | 1937年 |
| アメリカ | 4.02% | 1969年 |
| 日本 | 0.47% | 1940年 |
この検証の結果、17カ国のうち安全に取り崩しできる率が4%を超えたのは、カナダ・スウェーデン・デンマーク・米国のわずか4カ国のみ。そして、最も悲惨な結果になったのが日本でした。
1940年に退職したケースを想定した場合、日本の安全引き出し率はわずか0.47%という結果になっています。戦争とそれに伴うハイパーインフレによって、資産価値が徹底的に毀損されたことが背景にあります。
【戦後の安定期】日本株と日本国債での安全な取り崩し率は「2.5〜3%」が限界
戦前は特殊すぎるとして、戦後の安定した時期ならどうでしょうか。
別の論文では、1966年から2016年までの日本の株式・債券の月次データを使い、モンテカルロシミュレーションによる安全取り崩し率が検証されています。米国ではおなじみの「4%ルール」が、日本の実データでは半分にも満たない成功確率しかない、というのはなかなか衝撃的な数字です。
※参考:山口大学の城下・木下による研究「自分年金化と安全引き出し率」
| 取り崩し率 | 30年間で資産が 枯渇しない成功確率 | 最終的に残る残金 (元の額に比べての倍率) |
|---|---|---|
| 2.0% | 99% | 3.47倍 |
| 2.5% | 94% | 2.63倍 |
| 3.0% | 81% | 2.16倍 |
| 3.5% | 64% | 1.27倍 |
| 4.0% | 39% | 0.54倍 |
では、どこまで引き出し率を下げれば安全と言えるのか。
同じ検証データを見ていくと、取り崩し率を2.5%まで下げると成功確率は94%に、3.0%まで下げると81%まで回復します。一般にFIRE界隈で「合格ライン」とされる成功確率75%を上回るには、日本株式50%・日本国債50%というポートフォリオでは、取り崩し率を2.5〜3%程度に抑える必要がある、というのが現実的な着地点になります。
ここでさらに気をつけなければならないのが、この「2.5〜3%」という安全ラインですら、あくまで「引退後の期間が30年間」であることを前提としている点です。
私たちのような50代でFIREした人間にとって、人生100年時代を考えれば、その後の人生は40年、50年と続きます。期間が長くなればなるほど、資産枯渇リスク(失敗確率)は指数関数的に高まっていきます。
「じゃあ、60年生きるならどうなるの?」という疑問については、30年以上の超長期FIRE特有の厳しさについてまとめたこちらの過去記事も併せて確認してください
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ここまで「厳しい現実」ばかりお見せしてきましたが、大事なのはここからの「対策」です。
有料メルマガ第4回では、この続きの深堀と具体的な解決策をまとめています。
- 深堀:日本のデータでも起きていた「逆転現象」
「引き出し率が高いのに、守りに入って株式比率を下げると、かえって資産が枯渇しやすくなる」これはメルマガ第2回で紹介したPfau and Kitces(2014)のアメリカのデータだけの話ではありません。今回の日本資産での期間別シミュレーション(5年・10年・20年・30年)を見ていくと、日本の市場データでも同じ現象が起きていることがわかります。 - 論文が示すライフステージ別・変動引き出し戦略
今回引用した論文の筆者がのちに提唱した、退職後の人生を3段階に分ける「ライフステージモデル」について解説しています。 - モンチ流「フロア&アップサイド型ハイブリッド戦略」
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まとめ
最後に、今回の記事の要点をまとめます。
- 為替とインフレの相関を前提にすれば、米国資産を使った4%ルールの模倣は可能。
- しかし、日本国内資産に頼った場合、戦前は0.47%、戦後の安定期データでも4%の成功率は39%に過ぎない。
- 日本国内の資産運用における現実的な安全水準は「2.5%〜3%」である。
現実を知ることは怖いですが、早めに知っておけば対策はいくらでも打てます。正しいデータに基づき、自分のライフプランや戦略を冷静に見直しましょう。





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