著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
今日、「『今の職場はホワイトすぎるので退職する』という若手が増えている」というニュースをオンライン配信のニュースで目にしました。
いわゆる「氷河期世代」として過酷な環境で社会人生活をスタートさせた50代の私からすると、「ホワイト職場の何が不満なんだろう?」と、最初はジェネレーションギャップを感じました。
しかし、この現象をもう一度考え、先日行った30・40歳代FIRE達成者たちとの対談の内容と照らし合わせてみると、若い世代が「ホワイト職場」を去る極めて理由が見えてきたような気がします。
今回は、大企業で長年務めてきた私の実体験を交えながら、FIREを目指す上で本当に必要なものは何なのかを考えてみたいと思います。
若者が「ホワイトすぎる職場」を去る真の理由―それは「成長の機会損失」というリスク
かつてのブラックな働き方を知る世代には理解しがたいかもしれませんが、今の「ホワイトすぎる職場」は、若者にとってある種の「嫌な職場」になっているようです。
振り返ってみれば、私自身もサラリーマン時代に管理職として部下を指導する中で、そうした嫌な職場を作る片棒を担いでしまっていたのかもしれません。
私が勤めていた大企業では、管理職向けに「部下に寄り添い、伴走型で指導しなさい」と求める研修が頻繁にありました。しかし現実は自分の実務で手一杯です。 さらに追い討ちをかけるように「パワハラ研修」もあり、厳しい指導や強い言葉を使えばハラスメントだと何度も繰り返し説明されました。
多忙な実務とパワハラリスクの板挟みになった結果、私自身も「とりあえず、あれ調べといて」「このレポート、適当にまとめといて」という、当たり障りのない仕事だけを振る「ほったらかし指導」をしてしまっていたと、今更ながら反省しています。
社会全体を見ても、かつてのブラック企業批判からの強烈な揺り戻しが、極端に「干渉しない・踏み込まない」ホワイトすぎる環境を作り出したのかもしれないと思います。
その結果、若手が「今の仕事にやりがいを感じない」「ここではまともなスキルが身につかない」と危機感を抱いて会社を去るのも、ある意味で当然の構造だと言えます。
50代の私にとって「放置」は最高だった?退職前7ヶ月の『窓際FIRE』体験談
若手にとっては苦痛でしかない「放置(=ホワイト環境)」ですが、世代と状況が変われば、見えている景色は180度変わります。
私自身、FIREを決意して会社に「辞めます」と伝えてから、実際に退社するまでには7ヶ月の期間がありました(当初は4月に伝えて9月末で退職する予定でしたが、引き継ぎ等の都合で「もう1ヶ月いてほしい」と頼まれ10月末まで延びました)。
この最後の7ヶ月間、私の心境はまさに「窓際FIRE」と呼べる状態でした。
会社という組織と、自分という個人のアイデンティティを完全に切り離して考えることができるようになったのです。評価や出世にはもう1ミリも興味がありません。「熱血指導」も「過酷なノルマ」もない、ただ淡々と最低限の役割をこなす日々。
若手からすれば「放置されていて不安」な環境ですが、50代の私からすれば「誰からもプレッシャーをかけられず、意外と楽だし、毎月しっかり給料をもらえるからラッキー」という、極めて心地よいボーナスステージだったと思います。
30・40代FIRE達成者との対談で気づいた「FI(経済的自立)」の真実
なぜ、若手は「放置(ホワイト)」を嫌悪して会社を去り、50代の私は「放置(窓際)」を歓迎できたのか。
実は、先日公開した「FIREは何歳がベスト?30〜50代達成者の本音と50代特有の後悔・失敗談」という記事で、若くしてFIREを達成された方々の意見をまとめる過程で、私自身の考えが整理され、ひとつの新たな結論に辿り着きました。
対談を通して痛感したのは、若い世代のFIRE志望者は「サイドFIREをして、自分のしたい仕事に向けて人的資本を増やしていきたい」という、極めて前向きな意欲を持っているということでした。
これまで私は、FIREにおける「FI=経済的自立」とは、要するに「資産を十分に蓄えること」だと捉えていました。十分な資産という後ろ盾があれば、いつでも自分の意志で会社を辞められるし、逆に仕事が面白いのであれば続ければいい。そんな「選択の自由」を手に入れることこそが本質だと思っていました。
しかし、彼らとの対話を経て、私の考えは変わり、「FIの根幹は、実のところ『自力で稼ぎ、環境の変化を生き抜く力を強化すること』にあるのではないか」と思うようになりました。
若手がホワイト職場を恐れて辞める背景には、もちろん「放置されてやる気が出ない」「正当に評価されない」といった表面的な不満もと思います。
しかしその本質は、放置されることによって自身の人的資本が目減りしていくことへの、危機感にあるのではないかと思うようになりました。「人的資本など二の次でいい、給料さえもらえれば割り切れる」という考え方もありますが、これから頑張っていきたいと思う若者にとっては、その停滞は耐え難いリスクなのかもしれません。
逆に、50代の私が放置環境を喜んで甘受できたのは、すでにFI達成という金銭的なところは完成しており、人的資本の目減りはまったく気にする必要がなかったからだと思います。
まとめ:FIREに必要なのは「お金」と「人的資本」
FIREを目指す上で本当に大事なのは、「お金(金融資本)」だけではなく、「自分の人的資本をいかに育てていくか」——これが、ここ最近私が強く意識するようになった、FIREにおけるもう一つの重要な視点です。
ホワイト企業に入社できた若い方は、会社を「自分の成長のスポンサー」と割り切って、安定した収入を盾に、業務時間外でフリーランス系のスキルを磨き、クラウドソーシングなどを通じて外部の評価を積み重ねていく。確かなスキルが身につけば、キャリアアップや独立への道も自然と開けてきます。働く時間を抑えながら収入を確保する、サイドFIREという選択肢も見えてくるかもしれません。
金融資本と人的資本——この二つを意識して育てることが、FIREへの着実な一歩になると思います。



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