寿命から逆算して使い切る!FIRE取り崩し戦略「RMD方式」のメリットと落とし穴

寿命から逆算!RMD方式 FIRE基礎知識

 著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)

以前のブログで、「PMT関数を使った取り崩し術」や「VPW(変動率取り崩し法)」について書いたところ、非常に多くのページアクセスをいただきました。

おそらく多くの方が「せっかく貯めたお金を、どうやって効率よく使い切るか」というDie with Zero的な出口戦略に、頭を悩ませているのだと実感します。53歳で資産2億円を貯め、完全FIREを達成した私自身にとっても、これはまさに現在進行形の最大のテーマです。

そこで今回は、寿命から逆算して資産を使い切るための「第3の取り崩し手法」として、アメリカの税務ルールを応用した「RMD(義務的引き出し額)方式」をご紹介します。

この記事を読めば、アメリカ政府が認める合理的な寿命の算出法を、個人のFIRE戦略に落とし込むシンプルな方法がわかります。そして同時に、どんなに美しいシミュレーションにも潜んでいる「絶対に無視してはいけないリスク」についてもお話ししたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

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FIREの出口戦略に使える?米国発「RMD(義務的引き出し額)方式」とは

FIRE界隈の出口戦略といえば「4%ルール」が有名ですが、今回ご紹介する「RMD(Required Minimum Distribution:義務的引き出し額)」は、もともと個人の投資手法ではなく、アメリカの法律に基づく制度です。

アメリカの401(k)(確定拠出年金)やTraditional IRA(個人退職口座)といった年金口座には、「拠出時に税金が控除され、運用益も非課税になる」という強力な税制優遇があるようですが、米国政府からすれば「一生涯、非課税で放置されて、そのまま非課税で相続される」のは困るわけです。(ちなみに、遺産が1,500万ドル(約22億円〜23億円相当)以下なら税金がかからないようです)。

そこで米国政府は、「一定の年齢(現在は73歳から)に達したら、毎年最低限これだけの金額は引き出して、ちゃんと税金を払いなさい」という強制ルールを設けています。これがRMDです。もし引き出しを忘れると、不足額に対して非常に重いペナルティ(罰金)が課されるという厳しい制度でもあります。

このRMDの計算式は非常にシンプルで以下となります。

引き出し額 = 前年末の口座残高 ÷ 平均余命係数(政府機関が定める値)

この「残高を平均余命で割る」というシンプルなメカニズムは、私たち日本のFIRE民が「死ぬまでに安全に資産を使い切るための取り崩しシミュレーション」として応用ができそうです。

Die with Zeroを実現!RMD方式を個人のFIRE戦略に応用する方法

では、このRMD方式を私たち日本人のFIRE戦略にどう当てはめればいいのでしょうか。

答えはとても簡単で、「今年の資産残高を、自分の残り寿命(平均余命)で割るだけ」で、今年の引き出し可能額が決まります。

例えば、厚生労働省が発表している「令和6年簡易生命表」などを見ると、53歳男性の平均余命は約30年となっています。(わかりやすくキリの良い数字にしています。実際は29.81年)
参考:厚生労働省: 令和6年簡易生命表の概況

これを、私の現在の総資産2億円に当てはめて計算してみましょう。

  • 2億円 ÷ 30年 = 約666万円(月額 約55万円)

今年は「666万円」を引き出して生活費や趣味に使ってよい、という計算になります。

そして来年、54歳になった時は、その年の「新しい資産残高」を、「29年」で割ります。年齢が上がるにつれて分母となる「余命」が短くなっていくため、残高に対する引き出し率(%)が自然に上がっていくのが特徴です。

これにより、死ぬ時に莫大なお金が余ってしまう「使い残し」を防ぎつつ、毎年の残高を基準にするため数学上は寿命の前に資産が完全にゼロになることもありません。VPW(変動率取り崩し法)と似ていますが、複雑な「期待リターン」を計算式に入れない分、より直感的に理解しやすいのがメリットです。

RMD vs VPW vs PMT!50代FIRE民にとっての最適解は?

ここまで、寿命から逆算する3つの手法(PMT、VPW、RMD)が出揃いました。どれも『Die with Zero』を目指す合理的なアプローチですが、それぞれ目的や考え方で使い分けができます。

PMT方式
運用利回りを固定して計算するため、「定額ベース」で一定の生活水準を維持したい人や、FIRE達成に必要な目標額を逆算したい人向けです。

VPW法
株式や債券の「過去の実質期待リターン」をしっかり組み込み、市場の成長を取り入れながら投資効率を最大化して使い切りたい人向けです。

RMD方式
複雑な利回り計算を省き、純粋に「今の残高」と「余命」だけでシンプルに管理したい人向けです。

私個人としては、数字をこねくり回すのが好きなので、緻密な計算式に基づいた「VPW法」が好みではあります。しかし、「Excelで関数を組むのは面倒だな」と感じる方にとっては、電卓一つで今年の生活費がパッと弾き出せる「RMD方式」の考え方は、非常にわかりやすく実用的だと思います。

【守りの投資家視点】寿命からの逆算シミュレーションに潜む「机上の空論」の恐怖

さて、ここからが「守りの投資家」としての本題です。

PMT、VPW、RMD……どの手法を選んだとしても、これら「寿命から逆算する方式」には、絶対に無視してはいけない致命的な弱点があります。それは、「暴落時に生活が破綻するリスク」です。

Excelやスプレッドシートに数字を打ち込んで、100歳の時に見事に残高が「0円」になるシミュレーション結果を見ると、なんとも言えない美しさがあります。

しかし、現実は計算通りにはいきません。

もし今年、〇〇ショックのような大暴落が起きて、資産残高が30%減ってしまったとします。すると翌年、どの計算式を使って再計算しても、「今年の引き出し可能額(=使える生活費)が激減する」という恐ろしい現実が待っています。

「今年は相場が悪かったから、生活費を30%カットで我慢してね」と言われて、耐えられるか?

旅行や外食を我慢するだけならまだしも、私たち50代のFIRE民には、国民健康保険料や住民税といった「容赦のない重い固定費」がのしかかってきます。税金は、相場が暴落したからといって待ってはくれません。収入(引き出し額)の大きなブレは死活問題となります。

だからこそ、美しい計算式を過信して、ギリギリを攻めるようなシミュレーションを盲信するのだけは、絶対に避けてほしいと思います。

暴落に怯えない!50代FIREの生活を守る強固な防衛システム

では、こうした「机上の空論」の恐怖を払拭し、心穏やかにリタイア生活を送るにはどうすればいいのでしょうか。

現実の問題として、PMTやVPW、そして今回ご紹介したRMDといった「1つの計算式」だけで何十年ものFIRE期間を乗り切ろうとするのは、非常に危険と考えられます。

一般的に、最も強固で安全とされる防衛システムは、資産を一つの塊として扱うのではなく、目的別に分割して組み合わせる状態を作ることです。具体的には、以下の3つの役割に分けて管理します。

① 基礎生活費は「固定」でカバーする

絶対に削れない固定費(家賃、食費、そして国民健康保険料や税金など)は、相場に左右される計算式には頼らない。

ここは、債券の利金、高配当株からの配当、将来の公的年金、あるいは月数万円のアルバイトなどで、確実に入ってくる「固定収入の床」を作ります。

② 変動生活費は「変動」させて引き出す

一方で、旅行や趣味、外食といった「なくても生きていける娯楽費」については、インデックス投信などをVPWやRMDのルールを使って引き出します。

相場が良くて資産が増えた年は、計算上の引き出し額も大きくなるため、パーッと贅沢に楽しむ。ここには計算式のメリットを存分に活かします。

③ ショックアブソーバーを用意する

そして最も重要なのが、暴落時の対応です。もし〇〇ショックのような大暴落が起きて、②の計算上の引き出し額が激減してしまったらどうするか。

その年は「旅行を諦める」という選択をするか、あるいは用意しておいた「生活費の2〜3年分の現金バケツ」を取り崩して凌ぎます。決して、暴落している株を無理に売却(損切り)はNG行為です。

このように、生活費を分類し、「機能の異なる複数の考えを持って多様化すること」が、一般的に最も有効な暴落対策と言えます。

基礎生活費をインカムで守り、足りない分や娯楽費は相場に合わせて変動させ、いざという時の現金バッファで衝撃を吸収する。この複数の層のシステムを構築して初めて、どんな相場が来てもぐっすり眠れるFIRE生活が実現します。

さいごに

今回は、米国政府のルールを応用した「RMD方式」の仕組みと、寿命から逆算するシミュレーションに共通する「暴落時のリスク」について解説しました。

  • RMD方式は、「残高÷余命」で計算するシンプルで合理的なルール。
  • PMTやVPWと並ぶ、Die with Zeroに向けた第3のアプローチ。
  • しかし、どの計算式も「暴落時の減収」という現実的なリスクを伴う。

FIREの出口戦略において、「絶対に完璧な計算式」というものは存在しません。大切なのは、美しいシミュレーション表を作ることではなく、どんな相場が来ても、税金や国保の請求が来ても、ぐっすり眠れる「守りの仕組み」を作ることだと思います。

PS
皆さんは、せっかく貯めた資産を使い切るために、どのような出口戦略やシミュレーションを考えていますか?ぜひ、コメント欄で皆さんのアイデアを教えてください。

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