著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
SBI証券にログインしたら、力の入った社債の案内が目に飛び込んできました。
「ソフトバンクグループ株式会社 第70回無担保社債(愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド)」。仮条件は年4.300%~4.900%(税引前)。
定期預金の何十倍という利回りに「これは!」と前のめりになった直後、「発行総額1兆円」「S&Pの格付けはBB+」というニュースが目に入り、急にブレーキを踏んだ方も多いのではないでしょうか。
結論から先にお伝えします。
ソフトバンクグループ(以下、SBG)のLTV(純負債/保有株式価値)は13%、手元流動性は2.3兆円と、財務データを見る限り、向こう数年でSBGが資金繰りに窮する可能性は極めて低いというのが私の考えです。ただし、「7年」という期間の中に潜むAI投資のリスクや、BB+格付けの裏側については、正しく理解した上で購入を判断すべきだと思っています。
私自身、これまでもソフトバンクグループの社債を買ったことがありますが、今回は最新の財務データを基に、第70回ホークスボンドを徹底分解していきます。
第70回ソフトバンクグループ社債(ホークスボンド)の利回りと基本スペック
まずは今回募集される社債の中身を確認します。ひとことで言えば、期間7年・仮条件年4.300〜4.900%で1兆円を発行する、前代未聞の超大型社債です。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | ソフトバンクグループ株式会社 第70回無担保社債 (愛称:福岡ソフトバンクホークスボンド) |
| 期間 | 7年(満期:2033年9月16日) |
| 利率(仮条件) | 年4.300%〜4.900%(税引前) |
| 申込単位 | 100万円以上、100万円単位 |
| 発行額 | 1兆円 |
| 取得予定格付 | A(JCR) |
| 申込期間 | 2026年9月7日〜9月16日 |
※正式な利率は2026年9月4日(金)に決定される予定です。
※詳細は、SBI証券|ソフトバンクグループ株式会社第70回無担保社債
まず押さえておきたいのは、今回は途中で条件が変わらない「7年固定のストレートな普通社債」だということです。以前の記事で見送りをお伝えした「第9回劣後債(ハイブリッド社債)」のような、利払繰延条項や最長35年の資金拘束といった複雑な仕組みはついていません。
▼参考記事
これまでにも私はソフトバンクグループの普通社債を購入してきました。昨年の第65回(5年債・利率3.34%)や、購入していませんが今回と同じ7年債の第64回(7年債・利率3.15%)と比べても、今回の4.30%~4.90%という水準は明らかに一段高くなっています。過去の利率比較は以下の記事でも詳しく書いていますので、あわせてご覧ください。
▼参考記事
また、1兆円という発行総額は、国内企業による個人向け社債としては過去最大級の規模です。それだけ多くの資金需要があるとも言えますが、焦って申し込む前に、次に書くリスクの中身をしっかり確認しておきましょう。
利回り4.9%は危ない?S&P格付け「BB+」とAI投資に潜む2つのリスク
日本証券業協会の売買参考統計値データによると、A格付け7年債の市場平均利回りはおよそ3.189%(記事作成時点)です。今回の仮条件(4.30%~4.90%)は、この市場平均を1%以上も上回っています。
高い利回りには、当然理由があります。大きく分けると、次の2つです。
- S&Pベースでは「投機的等級」であること
- 7年という期間の中に潜む、AI投資の不確実性
まず1について。
日本経済新聞の記事にも記載されていますが、SBGの格付けは、評価機関によって見解が真っ二つに分かれています。SBI証券のWEBサイトに書かれている日本格付研究所(JCR)は「A」(投資適格)ですが、S&Pグローバル・レーティングの格付けでは「BB+」、つまり投資不適格級(投機的等級)となっています。
※参考: 日本経済新|ソフトバンクG、個人向け1兆円社債 利率最大で4.9%
過去にS&PがSBGの格下げを発表した際、SBGは公式プレスリリースで強い不満を表明し、それ以降S&Pやムーディーズといった海外格付け機関に新たな情報提供や評価依頼を出していません。
国内格付けの「A(JCR)」という評価は安心感を与えますが、これをそのまま鵜呑みにすべきではないと私は考えています。投資歴25年の私の記憶には、過去最大級のスーパー「マイカル」が破綻した時の記憶があります。あの時も海外格付け会社は早期に「投資不適格」としていましたが、国内機関は「投資適格」としたまま、破綻直前に急激に評価を下げ、結果的に個人投資家が割を食う構図となりました。
そして2のAI投資リスクです。
同じく日本経済新聞の記事にもある通り、今回調達する1兆円の使い道は「約4,000億円の既存社債の借換」と「フィジカルAI(現実世界で稼働するAIロボティクスなど)等への新規投融資」です。孫社長のAIへの全力投球は夢がありますが、7年という歳月は変化の激しいIT・AI業界では永遠に近い時間です。
「7年の間にAIバブルが弾けたらどうなる?」「想定していたリターンが出なかったら?」という事業リスクは、絶対に頭に入れておく必要があります。
ソフトバンクGの倒産確率は?LTV13%と手元資金2.3兆円から読み解く安全性
ここまでリスクを強調しましたが、では「ソフトバンクグループはすぐに倒産してしまうのか?」と問われれば、その可能性は極めて低いと断言できます。
SBGの財務状況は、想像する以上に強固な防衛策が張られているようです。
- LTV(純負債/保有株式価値)は13%
LTV(純負債÷保有株式価値)は、SBGの財務の健全性を測る最重要指標です。SBG自身の社内ルールは「通常時25%未満」ですが、直近はArm株などの上昇で資産価値が膨らみ、LTVは約13%まで低下しています。自社ルールの半分程度という、かなり余裕のある水準です。 - 手元流動性(現金)2.3兆円
今後2年間の社債償還予定が約1.5兆円あるのに対し、SBGは約2.3兆円の手元現金を確保しています。差し引き約8,000億円のバッファーがあり、極端な話「2年間、新規調達がゼロ」でも耐えられる計算です。 - 子会社からの安定配当
意外と見落とされがちですが、国内通信子会社の「ソフトバンク」から、おおよそ年間2,500億〜3,000億円規模の配当がSBGに入ってきます。これで利払いや本部の維持費はしっかりカバーできる構造です。
S&Pが厳しく見ているのは、あくまで「投資会社としての価格変動の激しさ」です。株価が乱高下する体質はリスクですが、それは即「資金ショート=倒産」を意味しません。倒産寸前だから1兆円を集めているのではなく、財務に余裕があるからこそ「攻めの投資資金」を集めている状態——これが実態に近いと思います。
短期的な資金ショートを過度に恐れる必要はありません。しかし、やはり「7年」というスパンで見ると、AIバブル崩壊などの変数が多く、先が読みづらいというのが正直な感想です。
さいごに
今回は、話題のソフトバンクグループ「第70回ホークスボンド」について、基本スペックと財務データから見た投資判断のポイントを解説しました。
- 仮条件の年4.30%~4.90%は魅力的だが、S&PのBB+格付けや7年間のAI投資リスクの裏返しでもある
- 一方で、LTV13%・手元現金2.3兆円を見る限り、数年内の資金ショートリスクは極めて低い
- 「元本保証の無リスク資産」ではないため、資産全体の数%以内のサテライト枠として検討するのが無難
年齢、資産規模、リスク許容度によって、正解は人それぞれ違います。ぜひご自身のリスク許容度と照らし合わせて、納得のいく選択をしてください。
※本記事は特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任においてお願いいたします。





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