「資産所得+ゆるい労働」で暮らすサイドFIRE。多くのFIRE民が目指すこのライフスタイルに、2025年、大きな転換点が訪れています。
政府による社会保険の適用拡大。いわゆる「106万円の壁」「130万円の壁」の撤廃議論や、企業規模要件の段階的緩和が進んでいます。これまでは「週3日バイトで社会保険に入らず、手取りを最大化する」のが定石でした。しかしこれからは、週20時間以上働けば、パートでも強制加入が当たり前の時代となるようです。
「手取りが減るからサイドFIREはオワコンなのか?」。それとも、これは「新しい安定の形」への進化になるのでしょうか。この記事ではFIRE視点でいろいろと考えていきたいと思います。
「106万円の壁」「130万円の壁」とは何か
これまで、パート・アルバイトで働く人には、社会保険加入に関する2つの「壁」がありました。
106万円の壁: 年収106万円以上(月8.8万円以上)で、従業員数51人以上の企業で週20時間以上働くと、社会保険への加入が義務化されていました。
130万円の壁: 年収130万円以上になると、企業規模に関わらず、配偶者の扶養から外れて自分で社会保険に加入する必要がありました。
アルバイト・パートで働いている方は、この壁の下に収まるよう労働時間や勤務先を調整し、親や配偶者の「扶養」から外れないようにしたり、国民健康保険と国民年金だけで済ませるようにすることで、手取りを最大化していました。
そして、この「壁」が段階的に撤廃さることになりました。具体的には:
- 企業規模要件の撤廃(すべての企業が対象に)
- 年収要件の引き下げまたは撤廃
- 週20時間以上働けば、ほぼ自動的に社会保険加入へ
つまり、「バイト先を選べば社会保険を避けられる」という抜け道が、今後は使えなくなる可能性が高いのです。ですので、サイドFIREの前提条件が、根本から変わろうとしています。
デメリット「手取り15%減」の衝撃
まずは現実を見つめましょう。多くの人が懸念している「デメリット」を整理します。
手取りの減少という痛み
社会保険(厚生年金・健康保険)に加入すると、給与の約15%が天引きされます。例えば、月10万円のバイト代が、手取り約8.5万円になるということです。
FIRE計画において、この「15%」のキャッシュフロー減少は決して小さくありません。
管理コストの増加
扶養内で働いていた配偶者がいる場合、扶養外れの手続きなど、事務的な管理コストも発生します。これまでシンプルだった家計管理が複雑化することも厳しいかもしれないです。
視点転換:社保加入は「あり」かもしれない
ここからが本題です。FIRE民だからこそ気づくべき、社会保険加入のメリットを解説します。実は、サイドFIREと相性が良いかもしれないです。
厚生年金という制度を利用しまくる
払った保険料は消えてなくなるわけではありません。将来の受給額として確実に積み上がります。
ここで重要なポイントがあります。国民年金(全額自己負担)とは違い、厚生年金は「会社が半分払ってくれる(労使折半)」という仕組みです。あなたが1万円払えば、会社も1万円払ってくれる。つまり実質的な「マッチング拠出100%」です。
「長生きリスク」へのヘッジとして、終身でもらえる年金が増える(しかも半分は会社が払ってくれる)のは、FIRE計画が盤石化します。早期リタイアを計画の人にとって、90や100歳まで生きた場合に不安が残ると思いますが、その不安を厚生年金が和らげてくれます。
傷病手当金という「隠れた保険」
国民健康保険(国保)にはない、協会けんぽ・組合健保だけの最強メリット。それが傷病手当金です。
病気や怪我で働けなくなった時、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支払われます。これは非常に強力なセーフティネットです。
FIRE生活における最大のリスクは何でしょうか。市場の暴落よりも、実は「自分の健康」かもしれません。病気で働けなくなり、医療費がかさみ、予定外の出費が続けば、再就職を余儀なくされることもあります。
傷病手当金があれば、医療費や生活費のために確保している「現金クッション(生活防衛資金)」を圧縮でき、その分をリスク資産に回すことも可能になります。
サイドFIRE「3つの生存戦略」
制度が変わった今、FIRE民の私たちはどう立ち回るべきか。具体的な3つのルートを提案します。
戦略A【防御型】:「週19時間」の壁を死守する
どうしても社会保険に入りたくない、手取りを最大化したい人向けの戦略です。
労働時間を週20時間未満に徹底的に抑えることで、社会保険の適用を回避します。
メリット: 手取りは減らない。キャッシュフローを最優先できる。
デメリット: 働ける時間が極端に短くなるため、より多くの資産所得が必要になります。また、求人の選択肢が大幅に狭まり、時給の高い仕事を見つける必要があります。
この戦略が向いている人は、すでに相当額の資産を築いている人、または配当金などの資産所得が安定している人です。
戦略B【適応型】:あえて加入して「セーフティネット」を使い倒す
週3〜4日働き、堂々と社会保険に加入する。これがサイドFIREの王道の選択かと思います。
思考の転換: 天引きされる15%を「掛け捨てではない保険料」と「老後への積立投資」の合計と割り切ります。実際、会社負担分を考えれば実質的なリターンは高い。
この戦略が向いている人は、資産がまだ十分でない人、健康リスクに不安がある人、より安定したライフプランを求める人かと思います。
戦略C【回避型】:「個人事業主・フリーランス」で稼ぐ
雇用契約(バイト・パート)ではなく、業務委託や副業(例えばUber Eats配達、Webライティング)で収入を得るルートです。
特徴: 社会保険の強制加入はありません(国民年金・国保は自分で払う)。また、経費計上ができるため、税金コントロールがしやすくなります。
メリット: 時間の自由度が最も高い。収入に応じて働く量を調整しやすい。
デメリット: 収入が不安定になりやすい。傷病手当金などの保障はない。確定申告などの事務作業が必要。
この戦略が向いている人は、自律的に働ける人、スキルや経験を活かせる人、完全な自由を求める人です。
まとめ
これからのサイドFIREは、「社会保険料をケチるスタイル」から、「社会保険という強力なインフラを利用するスタイル」へと進化していく必要がでてきました。
制度改革に屈せず、みんなで最適解を見つけていって、よりよいFIRE生活を目指しましょう。



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