著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
最近、ニュースなどで「2026年12月からiDeCo(個人型確定拠出年金)が70歳まで延長され、掛金も引き上げられる」という話題を耳にするようになりました。「非課税で長く積み立てができる」「老後資金の不安が少し和らぐかもしれない」と、前向きに捉えている方も多いのではないでしょうか。
私もこのニュースを見たとき、「自身の運用戦略にうまく組み込めるかもしれない」と、色々と考えて過去の記事にも書きました。しかし、制度の詳細を調べていくうちに、ダイヤモンド・オンラインの解説記事にたどり着き、手続きの選択次第では想定外の税負担が発生する注意点が潜んでいることを知りました。
参考:ダイヤモンド・オンライン:70歳までiDeCoに加入するなら「絶対に間違えてはいけない2択」の正体
また、あなたが会社員(またはサイドFIRE)なのか、私のような完全FIRE状態なのかによって、iDeCoとNISAの優先順位は大きく変わってきます。
今回は、資産を減らさない「守りの運用」を重視する私の視点から、2026年iDeCo改正のポイントと、ダイヤモンド・オンラインの解説記事の内容について記事にしました。
2026年12月スタート!iDeCo改正「70歳延長」と上限引き上げのポイント
まずは、2026年12月から施行されるiDeCoの法改正について、要点の確認です。大きく以下の2点が変わります。
- 加入可能年齢が「70歳未満」まで拡大
これまでは原則65歳未満まででしたが、さらに5年間延長され、70歳になるまで掛金を拠出(積み立て)できるようになります。 - 拠出限度額の引き上げ
毎月積み立てられる上限額が引き上げられます。- 会社員などの第2号被保険者:月額最大6.2万円
- 自営業・フリーランスなどの第1号被保険者:月額最大7.5万円
インフレへの対応や、「60代後半でも働く方が増えている」という時代の変化に合わせて、国が老後資産の形成を後押しする制度改定と言えそうです。
私のような無職の人(苦笑)は、月7.5万円(年間90万円)を非課税で積み立てられる枠ができるのは、非常に大きな変化ですね。
【重要】iDeCoとNISAはどっちが優先?属性別・正しい投資の順番
「上限額が引き上げられたなら、できるだけiDeCoを活用しよう」と考えるかもしれませんが、少し立ち止まって検討してみてください。
個人的には、「給与収入の有無」によって、iDeCoとNISAの優先順位が異なると考えています。これを間違えると、資金が引き出せないデメリットだけを抱えることになりかねません。
サラリーマン・サイドFIRE(給与収入がある人)の場合
現在お勤めで給与収入がある方や、サイドFIREとしてある程度の事業・給与所得がある方の場合は、【iDeCo 優先 > NISA】をお勧めします。
理由は、iDeCoの最大のメリットである「掛金の全額所得控除」をフルに活かせるからです。
毎月一定額の掛金を支払うことで、その年の課税所得が減り、支払う所得税や住民税が安くなります。投資をスタートした時点で「節税」という確実なプラス効果を得られるため、今回の掛金上限アップの恩恵を最も受けやすいのはこの層の方々です。
完全FIRE(給与収入がない人)の場合
一方、私のように完全に会社を退職し、給与所得がない完全FIRE民の場合は、【NISA 優先 > iDeCo】をお勧めします。
給与所得がないということは、そもそも所得税や住民税をほとんど支払っていません。つまり、iDeCoの最も強力な武器である「所得控除」のメリットがほぼ得られないことになります。
一方で、所得控除の恩恵がないまま、原則60歳まで引き出せない「資金拘束」の制約だけを受けるのは、あまり効率的ではありません。また、資金を引き出す際には、NISAと違い、退職金もしくは年金扱いとなり、金額が大きい場合は課税対象にもなります。
ですから、完全FIREの方が資産を運用するなら、いつでも引き出せて運用益が非課税になるNISAから優先して枠を埋めていくのが無難です。
▼以下の記事にも詳しく書いてます。
デメリットだらけ?完全FIRE民がiDeCoを続ける「たった1つの理由」
「完全FIRE民にはiDeCoのメリットが薄い」とお伝えしましたが、実はFIRE後もiDeCoの加入を続ける意味が1つだけあります。
それは、「少額でも長く加入し続けて、受け取り時の『退職所得控除枠』を増やすこと」です。
私の場合、53歳で退職した際にまとまった退職金をもらい、自身の退職所得控除枠を使い切りました。しかし、iDeCoのルールでは、退職後も掛金を拠出し続ければ、その拠出年数に応じて新たな控除枠が復活する仕組みになっています。(※積立期間20年以下の場合は1年あたり40万円)
そこで今回の「70歳まで延長」という税制改革を知ってからは、次のような計算をしていました。
「53歳から70歳までの17年間、iDeCoに加入し続ければ、40万円 × 17年 = 680万円 の非課税枠が新たに作れる。少額の掛金で拠出を続け、この680万円の枠の中に将来の受取額を収めれば、税金を抑えながら効率的に運用できるのではないか」
ただ、今回のダイヤモンド・オンラインの解説記事を読み解いていくうちに、この計画には「2つの注意すべき壁」があることに気がつきました。
iDeCo70歳延長の注意点① 基礎年金もiDeCoも「まだ受け取っていないこと」が絶対条件
最初の注意点は、「年齢が上がれば誰でも自動的に70歳までiDeCoを続けられるわけではない」という点です。
60歳以降(最大70歳まで)iDeCoの掛金拠出を継続するには、「まだ年金を受け取る側に回っていないこと」が絶対条件となります。
具体的には、国の「老齢基礎年金」を繰り下げていて1円も受給していないこと。さらに「iDeCoの老齢給付金」についても、まだ受け取りを開始していないことが求められます。「一部だけ先に受け取って、残りの期間は積立を継続する」といった器用な使い方はできません。
私の場合は、もともと「基礎年金もiDeCoも70歳まで繰り下げて運用しよう」と計画していたため、たまたまこの条件をクリアしていました。
しかし、もし途中で気が変わって「やっぱり65歳から年金をもらおう」と受給を開始してしまえば、17年間かけて退職所得控除枠を680万円まで増やすという綿密な計算が、その時点で頓挫していたことになります。
「受け取り時期は柔軟に選べるだろう」と軽く考えていると、思わぬ形で計画が崩れてしまう。この厳しい条件は、私にとっても盲点でした。
iDeCo70歳延長の注意点② 年金「一括受給」による遡及取り消しと税金追徴の罠
そして、先ほどの「年金等をまだ受け取っていないことが絶対条件」に関連して、もう一つ気をつけておきたいのが、年金の受け取り方にまつわる落とし穴です。
基礎年金の受給を繰り下げていた方が、後になって「やはり繰り下げるのをやめて、過去の分を一括で受給したい」と選択した場合に問題が起こります。
記事によると、年金事務所の窓口では、ごく普通に「一括受給」という選択肢が提示されるようで、もしここで一括受給を選ぶと、「一括受給を選んだ=実際には65歳から年金を受け取っていた(繰り下げていなかった)」とみなされ、65歳以降のiDeCo加入要件を満たしていなかったとして、過去に遡って取り消されてしまうようです。
その結果、以下の手続きが行われるとのことです。
- 該当期間にiDeCoの掛金で購入した資産が売却され、所定の手数料が差し引かれた上で返還される。
- 過去に受けていた「掛金の所得控除」も取り消されるため、所得税・住民税の再計算が行われ、過去の税金の追加納付(追徴)が発生する可能性がある。
コツコツと運用してきた資産の手数料が引かれ、さらに税金の追加負担まで生じるのは、できる限り避けたいところです。制度の仕組みを知らないまま窓口で選択をしてしまうと、思わぬ出費につながるという事例ですね。
さいごに
国が用意する制度はメリットが大きい反面、細かなルールを把握していないと想定外の不利益を被ることがあります。今回のポイントをまとめます。
- 属性で優先順位を変える: 給与収入があるなら【iDeCo優先】、完全FIRE民なら【NISA優先】。
- FIRE民のiDeCo活用法: 少額拠出で「退職所得控除枠(年40万)」を再構築する戦略は有効。
- 70歳延長の絶対条件: 「基礎年金・iDeCoを未受給であること」が必要。
- 一括受給の注意点: 基礎年金の「一括受給」を選ぶと、過去に遡ってiDeCoの加入資格が取り消され、税金の追加納付が発生する可能性がある。
私自身、シミュレーションソフトを使ってライフプランを立てていますが、こうした税金や社会保険料の複雑なルールを正しく理解することこそが、大切な資産を守り抜くカギのようですね。



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