著者:モンチ(投資歴26年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
SNSやマネー本を開けば、「インデックス投資は長期保有が鉄則」「10年も放置すれば複利の力で資産が増える」といった言葉が当たり前のように並んでいます。資産運用の第一歩を踏み出す背中を押すアドバイスとしては、確かに心強いものです。
しかし、ここで一つ疑問が浮かびます。「本当の長期投資」とは、一体何年のことを指すのでしょうか?
10年でも十分に長く感じられますし、人によっては「20年や30年だ」と言う方もいます。
私個人の結論からお伝えすると、10年程度の保有期間ではまだ不十分です。相場環境という「時期ガチャ」の当たり外れによって、元本割れや長期間の低空飛行に直面するリスクが依然として残っているからです。
そこで本記事では、155年分(1871〜2025年)のS&P500ローリングリターンデータと、私自身が身をもって味わった26年間のリアルな相場体験を交えながら、「なぜ15〜20年保有しなければ本当の安全圏に入らないのか」その論理的な理由を徹底解剖していきます。
※データ参照元:Moneychimp – S&P 500 リターン
なぜ「5〜10年」は長期投資と言えないのか?時期ガチャの罠
「5~10年持っていれば、過去のデータ上でもだいたいプラスになるはずでは?」
そう考える方も多いのではないでしょうか。
確かに、過去155年間のS&P500における5年保有の平均年率リターンは約9.6%と、数値だけ見れば非常に優秀です。
過去155年のデータが示す5年保有のリスク
しかし、実際の相場には常に「ブレ幅(標準偏差)」が存在します。5年保有における標準偏差は7.8%。これは、運悪く歴史的な大底の時期に重なってしまった場合、5年という歳月を費やしても資産がマイナスに沈むリスクがあることを意味しています。
では、歴史上「運が悪かった時期」は、一体どれほど厳しかったのでしょうか?
過去155年のデータから、1年および5年保有で成績が最も悪かった期間のワースト10を見ていきましょう。(※数字はすべて年率換算)
| 順位 | 1年保有 | 5年保有 |
|---|---|---|
| 1位 | 1931年: -44.2% | 1928〜1932年: -11.5% |
| 2位 | 2008年: -37.2% | 1929〜1933年: -10.4% |
| 3位 | 1937年: -32.1% | 1930〜1934年: -10.1% |
| 4位 | 1974年: -27.0% | 1937〜1941年: -7.4% |
| 5位 | 1907年: -24.2% | 1927〜1931年: -4.6% |
| 6位 | 1930年: -22.7% | 1970〜1974年: -2.6% |
| 7位 | 2002年: -22.3% | 2000〜2004年: -2.4% |
| 8位 | 1893年: -18.8% | 2004〜2008年: -2.3% |
| 9位 | 1917年: -18.6% | 1873〜1877年: -1.8% |
| 10位 | 2022年: -18.1% | 1910〜1914年: -0.7% |
1年保有や5年保有では、ワースト10の全期間でリターンがマイナスでした。ちなみに表内の太字は、私が実際に投資をしていて直撃を受けた期間です。
ワースト期間から学ぶ10年保有のリアルな実態
しかし、保有期間を10年まで延ばすと、少し様子が変わってきます。ワースト10のうち、マイナスに沈んだのは以下の4期間のみに減少します。
- 1999〜2008年(−1.5%)
- 1929〜1938年(−1.4%)
- 2000〜2009年(−1.0%)
- 1930〜1939年(−0.1%)
10年間保有して、ようやくマイナスの期間が消え始めてきます。
……ですが、ここで注目していただきたいことがあります。
10年保有で唯一マイナスとなった4期間のうち、「1999〜2008年」と「2000〜2009年」の2つの期間は、まさに私自身がリアルタイムで直撃を受けた時期なのです。
私がインデックス投資の世界に足を踏み入れたのは2000年。
始めてすぐにITバブル崩壊の手痛い洗礼を受け、そこから長期間耐え抜き、ようやく回復基調に乗ったと思った矢先、今度は2008年のリーマンショックが容赦なく襲いかかりました。
積立投資を頑張って続けているのに、資産が増えるどころか元本割れ寸前まで落ち込む日々——。「10年続けても報われないのか」というあの当時の絶望感と焦りは、今でも鮮明に覚えています。
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保有期間でどう変わる?1年・10年・20年・30年のリスクとリターン
では、投資期間をさらに延ばしていくと、数字はどう変化するのでしょうか。
S&P500の155年間(1871〜2025年)のデータから、各保有期間における平均リターンとリスク(標準偏差)を整理したものが以下の表です。
| 保有期間 | 平均リターン(年率) | リスク(標準偏差) |
|---|---|---|
| 1年 | 11.0% | 18.5% |
| 5年 | 9.6% | 7.8% |
| 10年 | 9.5% | 5.0% |
| 15年 | 9.3% | 4.1% |
| 20年 | 9.3% | 3.3% |
| 30年 | 9.5% | 2.2% |
ここで注目していただきたいのは、「平均リターンはほぼ変わらないのに、リスク(振れ幅)だけが急激に削ぎ落とされていく」という点です。
投資の世界でいう「リスク(標準偏差)」とは、危険度ではなく「振れ幅」を意味します。一般的な相場理論では、下振れの危険性を以下のように見積もります。
- リスクの1倍(±1σ): 約68%の確率で収まる平常時の範囲
- リスクの2倍(±2σ): 数十年に1度レベルの大荒れ(確率約95%の範囲外)
- リスクの3倍(±3σ): 100年に1度レベルの歴史的暴落(確率約99.7%の範囲外)
この考え方を10年保有(平均9.5%/リスク5.0%)のデータに当てはめてみましょう。
- 数十年に1度の悪条件(リスク×2のマイナス): 9.5% – (5.0% x 2) = -0.5%
- 100年に1度の超大底(リスク×3のマイナス): 9.5% – (5.0% x 3) = -5.5%
このように、10年投資を続けても「数十年に1度」クラスの運の悪さを引き当ててしまうと、元本割れ(マイナスリターン)になる可能性が依然として残っていることが数値からも分かります。
しかし、これが20年保有(平均9.3%/リスク3.3%)になるとどうでしょうか。
仮に「リスク×2(6.6%)」クラスの大暴落が直撃したとしても、9.3% – 6.6% = +2.7% と、プラス圏をしっかり維持できます。
10年(5.0%)から20年(3.3%)へと延ばすことで、リスクはさらに約3割以上も下がります。「10年持ったからもう安心」と考えるのは、まだ少し早いわけです。
平均リターンは年率9%台という高い水準をキープしたまま、マイナスになる振れ幅だけが消えていく——これこそが、長期投資が持つ真のポテンシャルです。
もちろん、実際の相場は完全な正規分布ではないため、計算上の確率を超える想定外の暴落が起きる可能性もゼロではありません。過去データが未来を完全に保証するものではないという大前提はありますが、それでも期間を延ばすことで勝率を極限まで高められるのが長期投資の強みです。
【18年越しの証明】2008年に「20年持ちたい」と書いた筆者が、2026年にFIREを達成して見えた景色の違い
ここまで解説してきた「20年の安全圏理論」は、決して後知恵の机上の空論ではありません。
今から18年前、リーマンショックの嵐が吹き荒れる直前の2008年7月、私は当時運営していた個人ブログで、過去データ検証を引用しながらこう書き残していました。
「バブルは弾けてみないと分からない」
「20年は保有したいですね」
「ビバ!! 長期投資(笑)」
20年持てば最悪でもプラス。当時のブログで公言した直後に、世紀の大暴落が来ました。
それでもデータを信じて、ルールを守り続けました。18年後の2026年、資産は2億円を超え、完全FIREを達成。「20年は保有したい」と書いた私が、実際に約20年持ち続けて、答え合わせができたわけです。
そして20年持ち続けて一番変わったのは、数字よりも心の景色です。含み益という大きなクッションができたので、今後もし暴落が来ても高みの見物。夜もぐっすり眠れます。同じ暴落でも、最初の10年とはまったく違って見えます。
「20年も待てない。途中で心が折れそう」。そう思う方もいるでしょう。だからこそ、暴落時に心を支える現金や債券のバッファーが必要です。私が今どんな備えで暴落に構えているかは、以下記事をどうぞ。
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まとめ:10年は「時期ガチャ」、15〜20年で本当の安全圏
今回は、155年分のデータと実体験をもとに、「5〜10年」の保有期間に潜むリスクと、20年保有がもたらす圧倒的な安全性についてお話ししました。
要点を振り返ります。
- 「5〜10年」はまだ相場の時期ガチャの領域:歴史上、10年保有しても元本割れや年率マイナスに沈んだ期間は確実に存在する。
- 保有10年から20年でリスクは激変する:標準偏差は5.0%から3.3%へと急低下し、時期ガチャの運から抜け出せる。
「5〜10年で安心」という思い込みに気づけたなら、短期的な相場の波に振り回されずに済むはずです。焦らず、20年という本当の安全圏を目指して、愚直に市場に居続けましょう。
PS
みなさんは新NISAなどのインデックス投資を、具体的に「何年保有する想定」で運用されていますか?「10年で取り崩す予定だった」「20年は寝かせるつもり」など、想定している保有期間や、暴落に対する備えについてコメント欄でぜひ教えてください!



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