著者:モンチ(投資歴26年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
最近の株高を受けて、ファンドの評価額が順調に増えている方も多いのではないでしょうか。証券口座の画面を眺めながら「もしかして、今ならFIREに踏み切れるかも?」と計算機を叩いている方もいらっしゃるはずです。
FIRE(早期リタイア)を目指す過程で、一度は耳にするのが「4%ルール」です。資産の4%を取り崩して生活すれば、理論上は資産が尽きないという有名な法則ですね。
しかし、株式市場が絶好調に見えるこのタイミングで、その魔法のようなルールをそのまま信じ切ってしまってよいのでしょうか。この記事では、現在の割高な相場環境において「4%固定取り崩し」を過信することの危険性と、長期的な期待リターンを現実的に見積もる方法について解説します。
割高相場でも迷わない!株価の未来は読めないが「長期リターン」は予測できる
「明日の株価が上がるか下がるか」をピタリと当てることは、プロでも至難の業です。相場はランダムウォークであり、目先の動きは誰にも読めません。
では、投資において未来を予測することは一切不可能なのでしょうか。
実は、ピンポイントの株価は当てられなくても、今後10年といった 「将来の長期的なリターンの期待値」であれば、ある程度の精度で見積もるアプローチが存在 します。
天気に例えると、来月15日が晴れか雨かは、誰にも当てられません。でも「11月は平均気温がこのくらいで、雨が多めの月だ」という目安なら、前もって知ることができます。傘を持つか、上着を何枚持っていくかは、その目安で決められますよね。
同様に、将来の株式市場の目安をもって、どんな市場環境でも冷静でいられるよう、「現実的なシナリオ」をあらかじめ設定しておくことができます。
▼関連記事
2008年のリーマンショックの時に、 シナリオを決めて暴落でも踏みとどまれた当時の記事をこちらで振り返ってます。
期待リターンを算出する「4要素の足し算」
では、過去の私のように迷わないために、将来の長期リターンをどう見積もればいいのでしょうか。
ヒントになるのが、米国の大手運用会社PGIMが2018年の論文で検証した「4要素の足し算(ビルディング・ブロック・アプローチ)」と呼ばれる方法です。
これは、以下の4つの要素を積み上げて、株の期待リターンを算出するアプローチです。
株の期待リターン = ①インフレ + ②実質の成長 + ③配当・自社株買い + ④株価の見直し
- インフレ:物価が上がれば、会社の売上も上がります。
- 実質の成長:物価の影響を除いて、会社の稼ぐ力がどれだけ伸びるかです。
- 配当・自社株買い:会社が株主に返してくれる「還元」の部分です。
- 株価の見直し:その株が「割高」か「割安」かの見直しです。割高さの目安に使うのが、株価を過去10年の平均利益で割った「CAPE(シラーPER)」です。
FIREの計画では、生活費もインフレで上がるので「実質」で考えます。実質ではインフレの分が消えるので、②+③+④の3つを足せば、実質のリターンになります。
しかもこの足し算は、CAPEだけで未来を当てにいくより、大外れしにくいことが論文で確認されています。
現在の米国株は割高?データ(CAPE)から読む今後の実質リターン
この計算式に、2026年10月時点の最新データ(S&P500)を当てはめてみましょう。
②の「実質の成長(GDP成長率の予想で代用)」が約2.0%、③の「配当・自社株買い」が約2.4%です。まず、④の「株価の見直し」をゼロとした場合、ベースとなる実質リターンは「2.0% + 2.4% = 約4.4%」となります。
※参考:インフレ、GDP成長率・配当(S&P500) ・配当・自社株買い
しかし、ここで最大のリスクとなるのが④の「株価の見直し」です。
株価の割高さの目安となるCAPE(シラーPER)を見ると、2026年10月時点で41台という、歴史的に見ても極めて高い水準にあります。1990年以降の平均が約27であることを考えると、現在の市場がいかに楽観的な価格で取引されているかがわかります。
※参考:CAPE
もし今後10年をかけて、この割高な状態が歴史的な平均へと戻っていく(平均回帰する)場合、④の要素が強烈なマイナスとして働き、私たちが得られる実質リターンを大きく削り取ってしまいます。
これを聞いて、「じゃあ今すぐ株を全部売って現金にすべきか?」と極端に考える必要はありません。いつ平均回帰が起こるか、あるいはこのまま高い水準が続くのかは誰にもわからないからです。
重要なのは、一点読みで相場を当てにいくのではなく、厳しいシナリオでも計画が壊れないかを点検することです。晴れの予報だけを信じて、傘を持たずに出かけないのと同じ感覚ですね。これが、守りのFIRE民としての私の鉄則です。
リターン低迷のリスク!「4%ルール」で資産寿命は本当に尽きないのか?
ここで深刻な問題が浮上します。
もしこのままリターンが低迷したら、FIREの前提である「4%ルール」の資産寿命は、一体どうなってしまうのでしょうか。
「初年度に資産の4%を取り崩し、以降はインフレに合わせて引き出し額を増やしていく」というこの一般的なルールは、株式市場が高いリターンを生み出し続けるという楽観的な前提の上に成り立っています。
私が過去のメルマガで、米国の110年分のデータを用いてこのルールを検証したときのことです。(Javier Estrada氏が2015年に発表した論文において、1900年から1980年までの各年をスタート地点とし、30年間のリタイア期間を想定。初期取り崩し率4%で「計81期間のローリング検証」を行ったデータです。)
その結果、世界でいちばん恵まれた市場とされる米国でさえ、失敗率は3.7%(※株式100%のポートフォリオの場合)でした。「絶対に大丈夫」というわけではありませんでした。
そこに「割高な相場で、リターンが低迷したら」という条件が重なれば、4%ルールの前提はさらに怪しくなってきます。では、この厳しいシナリオを前提とした上で、具体的にどのように資産を守り、安全に取り崩していけばよいのでしょうか。
今週の有料メルマガでは
こうした疑問に、数字で答えを出しているのが、有料メルマガの第11回です。前編にあたる第10回では、今回の「4要素の足し算」で今後10年の期待リターンを試算しました。後編の第11回では、その結果を使って、次のポイントを検証しています。
- リターンが低迷したとき、4%固定取り崩しの資産寿命はどうなるのか
- 相場が平均に戻る厳しいシナリオでも、資産を40年持たせるための現実的な取り崩し率のシミュレーション
- 割高相場を生き抜くための、アクションプラン
夜ぐっすり眠れる「守りの陣形」を、具体的な数字とともに完成させたい方は、ぜひこちらからチェックしてみてください。
メルマガ:FIRE達成おやじの舞台裏:ブログでは語りきれない投資の葛藤と生原稿

記事単品売りとなりますが、noteでも公開しています。
(毎週月曜日に新記事公開)
まとめ:最悪を想定し、破綻しないFIRE計画を立てよう
今回の記事の要点をまとめます。
- 株価は読めないが、「今後10年の期待リターンの幅」なら見積もれる。
- 期待リターンは「インフレ+実質の成長+配当・自社株買い+株価の見直し」の足し算で考える。FIRE計画では、インフレを除いた3要素の「実質」で見る。
- 今のCAPEは41台。割高な相場では、今後のリターンが低迷するリスクを織り込んでおく。
- 大切なのは、相場を当てにいくことではなく、厳しいシナリオでも計画が壊れないかを定期的に点検すること。
資産運用において最も大切なのは、最悪の事態を想定しつつ、それでも生活が破綻しない仕組みを作っておくことです。
PS
あなたは現在の割高な相場環境をどう見ていますか?ご自身のFIRE計画において、今後の株の期待リターン(実質)を何%で設定しているか、またその理由について、ぜひコメント欄で教えてください。




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