FIRE後のリバランスの頻度・タイミングは?89年間のデータが示す最適解

FIRE後のリバランス最適解 投資の基本

 著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)

先週のブログ記事「【衝撃の結論】「年齢とともに株を減らす」が資産寿命を縮める真犯人だった」では、FIRE後の資産配分についてかなり大事なテーマをお話ししました。

それは、定石とされる「年齢とともに株式比率を下げていく右肩下がりの運用」よりも、リタイア直後は株式比率を低めに抑え、時間をかけて徐々に株式比率を上げていく「右肩上がり」の方が、結果的に資産寿命を伸ばしやすいという話でした。そして、その右肩上がりの配分を自然に作り出す仕組みとして、私が実践している「バケツ戦略」をご紹介しました。

▼参考記事

しかし、ここで多くの人がぶつかる壁があります。「じゃあ、ズレてきた株と債券の比率は、いつ、どのタイミングでリバランスすればいいの?」という疑問です。

FIRE達成後、株価が大きく上がって株式の比率が増えたとき、「すぐに売って安全な配分に戻すべきか?」と悩む。逆に相場が暴落したとき、「安全資産を切り崩して、底が見えない株を買い増すべきか?」と恐怖で手が止まる……。資産配分を守ろうとすればするほど、相場が動くたびにリバランスしたくなる衝動に駆られるものです。

ですが実は、頻繁にリバランスを繰り返しても、運用結果は劇的には良くなりません。

今回は、インデックス投資の世界的権威であるバンガード社が発表した約89年分(1926年〜2014年)の市場データをもとに、毎日の株価チェックから解放されるための「最適なリバランスの頻度」について、FIRE生活を送る50代おやじのリアルな視点から紐解いていきます。

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リバランスの目的はリターン最大化ではない

まず大前提として、リバランスの本来の目的を再確認しておきましょう。

リバランスは、よく「値上がりした資産を売り、値下がりした資産を買うことでリターンを高める方法」と思われがちです。いわゆる「安く買って高く売る」ための儲けのテクニックだと思っている方が少なくありません。

しかし、バンガード社の論文は「リバランスの目的は、リターンを最大化することではなく、目標とするリスク水準からズレすぎないようにすることである」と明確に述べています。

株式と債券では、値動きの荒さも期待できるリターンも異なります。何もせず放置すれば、長期的には株式の比率がどんどん膨らんでいき、気づかないうちに、自分が想定していた以上のリスクを抱え込むことになってしまうのです。

つまりリバランスとは、「安く買って高く売る儲けのテクニック」ではなく、自分の器に見合ったリスク水準に、資産配分を戻すための防御的な作業というわけですね。

これはFIRE後には、想像以上に重い意味を持ちます。会社員時代は毎月の給料という強力な「盾」がありました。多少リスクを取りすぎても、暴落しても、生活費は給料でまかなえたからです。しかしFIRE後は、生活費そのものを資産から引き出します。リスクの取りすぎは、そのまま「暴落時に安値で生活費のための株を売らされる」という死活問題に直結します。だからこそ、守りの運用ではリスク管理としてのリバランスが欠かせないのです。

出典:Vanguard Research「Best Practices for Portfolio Rebalancing」(2015年11月)

暴落のタイミングでリバランスは可能か?バンガードのデータが示す残酷な現実

リバランスの重要性は頭で理解できても、実際に暴落が起きたとき、人間は教科書通りには動けません。

バンガード社の論文には、2006年から2014年にかけての世界の投資信託・ETFの資産動向を示す、非常に生々しいデータが掲載されています。

このグラフを見ると、2006年末には「62%」あった世界の株式割合が、リーマンショックの暴落時に「38%」まで真っ逆さまに落ち込み、その後、相場が回復した2014年末にようやく「56%」まで戻っていることがわかります。

これは何を意味しているのか? 大多数の投資家は、暴落時にリバランスすることができず、ただ相場の波に流されて放置していたという残酷な事実です。

「自分は暴落が来ても、冷静に買い増せるはず」——そう思う方もいるかもしれません。でも世界中のお金の動きがこうなっているということは、それだけ人間の心理として、暴落時にリスク資産を増やす判断がいかに難しいかを物語っています。

最適なリバランスの頻度とは?「毎月」と「年1回」のシミュレーション比較

では、「頻繁にチェックして、こまめに調整すればいい」のかというと、これもまた違うようです。

バンガード社は、1926年〜2014年の約89年間のデータを使い、株式50%・債券50%のポートフォリオについて、毎月・四半期・年1回など、異なる頻度でリバランスした場合の結果を検証しています。

1926年〜2014年までの検証結果は、次のとおりでした。

リバランス頻度年率リターン年率ボラティリティリバランス回数
毎月8.0%10.1%1,068回
四半期ごと8.2%10.1%355回
年1回8.1%9.9%88回
なし8.9%13.2%0回

この表を見てもわかる通り、リターンやリスク(年率ボラティリティ)には、頻度による意味のある差はほとんど見られません。毎月やっても年1回でも、リターンは8%前後、ボラティリティも10%前後で大きくは変わらないのです。

一方で、大きく違ったのがリバランスの「回数」です。毎月強制的にリバランスすると、89年間で実に1,068回。これが年1回なら、わずか88回で済みます。

成績はほぼ同じなのに、売買回数だけが10倍以上に膨らむ。これは、課税口座で運用している人にとってはかなり厳しい話です。売買のたびに税金やコストが発生し、資産を静かに削っていくことになるからです。

FIRE後に自由な時間を手に入れたはずなのに、毎月ポートフォリオを確認し、そのたびに売買を判断する。それでは、資産管理に追われる生活になりかねません。

「リバランスしない」は危険!完全放置ポートフォリオの末路

「なんだ、頻繁にやらなくていいなら、もうずっと放置でいいや」

そう思ってしまった方は要注意です。面倒だからと完全放置すると、想定以上の株式リスクを背負い込むことになります。

先ほどの表の「なし」の行が、まさにそれです。株式50%・債券50%でスタートしたポートフォリオを一度もリバランスせずに放置すると、リターンは年率8.9%とたしかに一番高くなりますが、その代わりにボラティリティは13.2%まで跳ね上がっています。

さらに、資産配分そのものも大きく崩れます。放置を続けると、平均株式比率は約81%まで上昇し、最大で97%になる時期もありました。

つまり、最初は株式50%のつもりだったのに、気づけば80%、90%にまで膨張してしまうのです。現役時代であれば「リターンが高くてラッキー」と笑えるかもしれませんが、生活費そのものを資産から取り崩すFIRE後において、これほど肥大化したリスクを抱えたまま暴落の直撃を受けるのは、あまりに危険すぎます。

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バンガード社が導き出した最適なやり方と、実践を阻む「感情の壁」

これらを踏まえた上で、バンガード社は以下のような現実的な結論を導き出しています。

「多くの分散された株式・債券ポートフォリオでは、年1回または半年に1回確認し、目標配分から、あらかじめ決めたズレ幅を超えた時にリバランスする」

つまり、毎日株価をチェックする必要はなく、「年1〜2回だけ見て、例えば5%以上ズレていたら動く、5%以内なら見送る」という大まかなルールで、リスクコントロールとコスト削減のバランスが十分に取れるということです。

ただ、「なるほど、じゃあ明日から自分もやってみよう」——そう思われた方、実はここからが本題です。実際に運用しようとすると、まだ足りないものがあることに気づきます。

たとえば、

  • 株式比率が55%になったら、目標の50%までキッチリ売り戻すべきなのか。それとも、設定した上限(例えば55%)を超えた分だけを売ればいいのか。
  • リバランス設定のズレ幅について、例えば5%ではなく1%や10%の方がいいのではないか
  • もらった配当金や利息は、リバランスの作業にどう絡めればいいのか。

こうした「具体的にどう実行するか」の部分を、相場が穏やかなうちに自分ルールとして決めておかないと、いざ暴落や急騰が来たときに必ず迷い、結局は感情に流されてしまいます。

実は、この「いつ・どのくらい・どこまで」の具体的な実行手順について、今週の有料メルマガでさらに踏み込んで公開しています。

「リバランスが必要なのは分かった。でも、実際にいつ、どのくらい動けばいいの?」——そんな方は、ぜひ続きをご覧ください。

メルマガFIRE達成おやじの舞台裏:ブログでは語りきれない投資の葛藤と生原稿

さいごに

FIRE後の資産管理は、相場が動くたびに右往左往して判断するのではなく、「いつ」「何%ズレたら」「どこまで戻すか」を事前に決めておくことがすべてです。

  • リバランスの目的は儲けるためではなく、リスクを自分の許容範囲に戻すこと
  • 暴落時、人は理屈通りに動けず、多くの投資家が波に流されて放置していた
  • 毎月動いても年1回でも成績はほぼ同じ。差が出るのは税金やコストだけ
  • かといって完全放置も危険。株式比率は気づかないうちに膨らんでいく
  • バンガード社の目安は「年1〜2回のチェック+一定のズレ幅を超えたら検討」

これらを事前に決めておくことで、日々の株価のノイズから解放され、心穏やかなFIRE生活を送ることができます。

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