著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
「そろそろ会社を辞めたいな……」
そんな考えが頭をよぎった瞬間から、多くの方が「でも、具体的に何から準備すればいいんだろう」という漠然とした不安に襲われるのではないでしょうか。
投資歴25年、資産2億円を築き、53歳で完全FIREを達成した私ですが、振り返ってみて「退職前にこれをやっておいて本当によかった」と思う準備を、今回は「9つのステップ」としてまとめてみました。
派手な投資テクニックの話ではありません。地味だけれど確実な準備を積み重ねることが、お金の不安も心の不安も、静かに小さくしてくれると実感しています。
【ステップ1:税制優遇と口座の最適化】手元に残るお金を最大化する3つの鉄則
現役最後の高収入期は、非課税・節税という「箱」を限界まで使い倒し、口座をシンプルに整えておく最後のチャンスです。会社員のメリットをしっかり回収し、お金の置き場所を分ける「アセット・ロケーション」の視点を持っておくと、退職後の手取りが驚くほど変わってきますよ。
1. iDeCo・企業型DCは「全額所得控除」を限界まで使い倒す
全額所得控除になる確定拠出年金(マッチング拠出やiDeCo)は、限界まで使い倒しておくのが鉄則です。掛け金は給与として「なかったこと」にできるため、掛け金のおよそ20~30%相当が税負担の軽減として跳ね返ってくる感覚です。現役時代は多少手取りが減ってもできるだけ多くの額を拠出し、退職後に掛け金を減らせばまったく問題ありません。
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2. 新NISA枠(最大3,600万円)の優先確保と出口戦略
退職直後からの生活費として、いつでも非課税で引き出せる新NISAの枠は優先して埋めておきましょう。夫婦2人であれば、合わせて3,600万円という非常に大きな非課税枠を活用できます。
……ちなみに我が家の場合、妻が投資に消極的なため、私の分しかNISA枠を利用できていません。夫婦合算の枠をフルに使えているご家庭が、正直うらやましい限りです。退職後にNISAや特定口座をどの順番で取り崩し、年間利益を43万円以下に抑えるかという出口戦略については、以下の記事にまとめています。
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3. 確定申告の有利・不利を分ける「証券口座の断捨離」
私の場合はクレカ積み立てでポイ活をしているため、まだ複数の口座を持っていますが、メインで使うネット証券は2社ぐらいに絞り、使っていない口座は退職前に整理・移管しておくことをおすすめします。理由は、口座を2つに分けておくと、確定申告を「する口座」と「しない口座」を自分で選べるという、地味だけれど強力な節税テクニックが使えるからです。
特定口座(源泉徴収あり)は、口座ごとに損益が完結する仕組みになっています。
そこで、片方の口座では利益を住民税等がかからない金額以下に抑えたうえであえて確定申告をし、源泉徴収された約20%の税金を全額還付してもらいます。そしてもう片方の口座は、利益が出ていても確定申告をしない「申告不要」を選択します。申告しなければ所得0円として扱われるため、住民税非課税・国保7割軽減というお得なステータスを崩さずに済むのです。
【ステップ2:資産寿命を延ばす】暴落に備える「守り」のポートフォリオ構築
退職直後に暴落が来ると、資産の寿命そのものを縮めてしまう「シーケンス・オブ・リターン・リスク(リターン順序のリスク)」に突入してしまいます。増やす投資から、守る投資へ。増やす能力と同じくらい、守りながら賢く使う能力が問われるのが、退職後のポートフォリオ戦略です。
4. 「バケツ戦略」への移行で株式・債券の黄金比を作る
オルカン等の株式ファンド1本持ちから、「株式」「債券」「現金」を分けて持つ形へ、退職前から少しずつ移行しておきましょう。暴落時には値下がりした株式には手をつけず、値動きの安定した債券を取り崩して生活費にあてる。このディフェンスの型を、あらかじめ用意しておくことが安心への第一歩です。
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5. 相場の荒波を耐え抜く「2〜3年分」の現金確保
投資とは完全に切り離した、安全な預貯金を必ず確保しておいてください。これがあるだけで、相場がどれだけ荒れても「あと数年は投資信託を売らなくていい」という、絶対的な精神安定剤になってくれます。
【ステップ3:お金以外のリアルな不安を消す】家族と自分の「心」の準備
財務面以上に厄介なのが、「家計の不透明さ」「夫婦間の価値観のズレ」「退職後の虚無感」という、お金では測れないリアルな不安です。「お金さえあれば奥さんも納得するし、毎日遊んで暮らせるはず」と私も思っていましたが、現実はまったく違いました。現役のうちに、これらを一つずつ潰しておくことを強くおすすめします。
6. キャッシュフロー崩壊を防ぐ「負債完済と大口出費の前倒し」
クレジットカードの残債はきれいに完済し、住宅の修繕や家電の買い替えといった何十万円規模の大口出費も、安定した給料があるうちに済ませておきましょう。退職後に想定外の支出が発生すると、せっかく立てたキャッシュフロー計画が根底から崩れてしまいます。
7. ツールを使った「超・現実的」な支出把握
どんぶり勘定はここで卒業し、ツールを使ってインフレ率も加味した「本当の生活費」を正確に把握しておきましょう。私はGnuCashという家計簿ソフトで管理を行っていますが、世間一般にはマネーフォワード等のソフトが有名ですよね。税制の壁を意識しながら1円単位で正確な数字をつかんでおくことが、退職後の揺るぎない安心につながります。
8. FIRE最大の壁「家族の説得」と現実的な妥協点
パートナーへFIREの説得をする際、理想を言えば完全に合意できるのが一番です。退職は自分ひとりの問題ではなく、パートナーの生活リズムや家事負担を激変させる大きなイベントでもあります。もし100%の説得が難しくても、家事分担の約束といった交換条件による割り切りや妥協が、現実的な着地点になると思います。オンラインコミュニティで色々な方のお話を聞くと、数年前から退職後の生活について丁寧に説明し、ビジョンを共有していく方が多かったです。
正直に告白すると、私の妻もいまだに「やっぱりFIREには反対だった」とこぼすことがありますし、実家の両親には心配をかけないようFIREを隠して「リモートワークで働いている」と伝えています。皆さんにはこうならないためにも、早期リタイアを少しでも考え始めた頃から、パートナーとの会話を少しずつ進めていくことがとても重要だと感じています。
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9. 虚無感を防ぐ!生産性を求めない「サードプレイス」の確保
退職後に大切なのは、「FIREして何から逃れるか」ではなく、「FIRE後に何へ向かうか」を現役時代のうちに見つけておくことです。私自身、FIRE直後にゲームや動画鑑賞ばかりしていた時期があり、「これって時間の無駄なのでは?」と虚無感に襲われたことがありました。
それ以降は、趣味を「強化・癒やし・交流」の3つの箱に分類し、バランスを取るように工夫しています。また、仕事以外で没頭できるサードプレイス(第3の居場所)を持っておくと、心の安定度が驚くほど違ってきますよ。
今はオンラインコミュニティで価値観の合うメンバーとゆるいつながりができ、とても満足しています。世の中に「無駄な時間」なんてものはなく、ただ「偏り」があるだけなのかもしれません。生産性のない趣味への罪悪感を消す「3つの箱理論」については、以下の記事で紹介しています。
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さいごに
今回は、退職を考え始めたら準備しておきたい9つのステップをまとめました。振り返ると、大きく以下の3つに整理できます。
- 税制優遇と口座整理で、手元に残るお金を最大化する
- 3つのバケツで守りのポートフォリオを構築し、暴落から資産の寿命を守る
- 支出管理と夫婦間の対話で、お金以外の心の準備を整える
退職への不安は、いきなりゼロにはなりません。ただ、今日できる小さな「守り」の行動を一つずつ積み重ねていけば、その不安は確実に小さくなっていきます。まずはできることから、一緒に準備を始めてみませんか?
※本記事で紹介している特定口座の「申告不要制度」や国保の軽減措置は、私の実体験に基づくものです。お住まいの自治体や個人の所得状況、税制改正によって適用条件が異なるため、実行前に必ずお住まいの市区町村の窓口や税理士にご確認ください。







コメント
いつも参考にさせていただいています。
上記に加えて私が実践したのは・・・
①ゴールドカードを作っておく
たまたま必要性があって作ったのですが、ETCカードとガソリンはこのカードで決済して年会費無料としています。AMEXなので限度額がなく、年会費無料のハードルが低く重宝しています。
②住宅ローンを組んでおく
リタイアするとローンを組むのは難しいので、会社員時代にFIRE後の家を購入し、ローンを組みました。全額すぐに返すこともできましたが、ローンの金利総額<定期預金の利息 の状態ならばよい借金なのでゆっくり返済するつもりです。
なお、やっとけばよかったと思うのは・・・
①一時所得になる保険の解約金を受け取っておく
退職後、任意継続の間に個人年金保険を解約して一時所得として益出ししておけばと思っています。今やると所得として補足されますし、年金が開始してしまうと雑所得になってしまうので、60歳以降の所得をコントロールする意味でも早く解約しておけばよかったなと。
②ロボアドバイザーの源泉徴収設定
私はロボアドバイザー投資をして積み立てをしていましたが、他の特定口座同様、損益通算の都合上「源泉分離なし」にしていました。特定口座については退職後に源泉分離に変更していたのですが、ロボアドバイザーは変更を失念していました。ロボアドバイザーは定期的にリバランスして売買が発生、その都度利益が出てしまい、退職1年目には想定していなかった所得が出てしまいました。結果として退職2年目には無駄な国保を払わざるを得ませんでした。このような一任勘定で運用するものは、基本、源泉徴収アリにしておくのがよいと思った次第です。