著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
会社を早期リタイアして、ようやく念願の自由な時間を手に入れたとき。ふと押し寄せてくるのが「これまで守られてきた会社の制度から外れる」という不安ではないでしょうか。
私も53歳で28年勤めた大企業を退職し、完全FIREを達成した際、痛感したのが「保険」の問題でした。会社員時代は福利厚生のグループ保険を利用し、掛け捨ての生命保険や医療保険などを組み合わせて月1万円程度に抑えていました。しかし、退職と同時にそのほとんどが継続不可となり、ゼロから保険の「大掃除」と見直しを迫られることになったのです。
この記事では、感情に流されず電卓を叩いて「即解約するもの」「継続必須のもの」「要検討のもの」を仕分けたリアルな基準をお伝えします。あわせて、2026年8月に施行される高額療養費制度の改正情報と、子育て世代が悩みがちな「ジュニアNISA、こどもNISAか学資保険か」問題にも触れています。
結論:FIRE達成者の保険見直しリスト一覧
会社員時代の保険は「労働収入を守るため」のものでした。しかしFIRE後は、守るべき「給与」がありません。代わりに手元にあるのは、最強の保険である「資産」です。だからこそ、保険に対する考え方は180度変える必要があります。
とはいえ「じゃあ全部解約でいいのか」というと、それは早合点です。資産を底から破壊しかねない数千万円〜億単位の損害賠償リスクに対しては、引き続き保険で強固に備えるべきです。
先に結論を一覧にまとめました。
| 保険の種類 | 判断 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 医療保険・がん保険 | 解約 | 高額療養費制度+自家保険で十分 |
| 就業不能保険・所得補償保険 | 解約 | 守るべき給料がない |
| 個人賠償責任保険 | 継続必須 | 億単位の賠償リスクに直結 |
| 火災保険 | 継続必須 | 住宅価値の毀損はFIRE計画に直撃 |
| 自動車保険(対人・対物) | 継続必須 | 賠償額は青天井、無制限で加入 |
| 貯蓄型保険(年金・学資など) | 要検討 | 予定利率と今の国債利回りを比較 |
| 死亡保障(生命保険) | 要検討 | 相続対策としてなら継続もあり |
それぞれ、なぜそう判断したのか、私の実体験を交えて解説していきます。
【即時解約】資産形成が終わったFIRE民に「医療保険」がいらない理由
2026年8月改正!高額療養費制度と「自家保険」があれば医療保険は不要
FIRE達成者にとって、医療保険・がん保険・就業不能保険は「期待値の低いギャンブル」だと私は思っています。数百万円程度のトラブルのために保険会社へ手数料を払い続けるより、手元の資産で受け止めたほうが合理的だからです。
その根拠になっているのが、日本の「高額療養費制度」です。ひと月の医療費がどれだけかさんでも、所得区分に応じた自己負担の上限額を超えた分は払い戻される仕組みで、たとえば年収約370万〜770万円の区分であれば、ひと月あたりの自己負担はおおむね8万円程度で済みます。しかもFIRE後は労働収入がなくなるぶん、住民税非課税世帯に該当するケースも珍しくなく、その場合は月35,400円程度まで負担が下がります。
ちょうどこの記事を書いている今が節目のタイミングで、いよいよ来月、2026年8月から高額療養費制度の自己負担限度額が改正されます。所得の高い区分ほど引き上げ幅が大きく設計されていて、年収約370万〜770万円の区分は月80,100円程度から85,800円程度へ、住民税非課税世帯は35,400円から36,900円程度へと、それぞれ数千円ほど上がる見込みです。
※詳細:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
一方で、直近12か月に3回以上上限に達した場合に4回目以降の負担が下がる「多数回該当」の水準は、当面据え置かれます。
さらに2026年8月からは新たに「年間上限」も設けられ、月単位の負担が上限に届かない月が続いても、1年間の合計自己負担が一定額(370万〜770万円の区分で年53万円程度)に達すればそれ以上の負担が発生しなくなります。所得区分そのものが5区分から13区分に細分化されるのは2027年8月からの第2段階で、そこでさらに上限が調整される予定です。
それでも「ひと月数万円〜十数万円」というレンジであることに変わりはありません。
「先進医療」や「差額ベッド代」が心配になるかもしれませんが、その費用(数百万円程度)はFIRE達成者であれば資産から出せる範囲です。毎月の保険料を払い続ける代わりに、銀行口座に「医療費用の予備費」を置いておく「自家保険」で十分に対応できる、というのが私の判断です。
就業不能保険・所得補償保険も不要(守るべき給与がないため)
就業不能保険は、働けなくなって給料が途絶えるリスクに備える保険です。ですがFIRE達成者は、そもそも労働収入に依存していません。守るべき給料がない以上、加入し続ける意味は薄いというのが私の結論です。結婚を機に「もし働けなくなったら家族はどうなるのか」と考えて手厚くした保障でしたが、資産所得で生活が回る今となっては、その役目はすでに終えたと感じています。
【継続必須】FIRE資産を一撃で破壊する「損害賠償リスク」には備えるべし
億単位の賠償リスクや、資産の根幹を揺るがすようなリスクにだけは、ケチらず保険会社に手数料を払い続ける必要があると思っています。
個人賠償責任保険
自転車で人にケガをさせた、飼い犬が誰かを噛んでしまった、水漏れで階下に被害を与えた……。こうした賠償額は数千万円〜1億円を超えることもあり、FIRE資産を一撃で吹き飛ばしかねません。私は幸い、会社のOB会経由でこの保険(自転車保険に付帯する個人賠償責任保険)だけは継続できたので、そのまま残しました。月額数百円で「億のリスク」を防げる、コスパの最も良い保険だと痛感しています。
火災保険
持ち家であれば、火災や地震で家が全焼・全壊すると資産価値がゼロになり、FIRE計画そのものが破綻しかねません。建物評価額に見合った補償は必須です。ただし、過剰な家財補償などは外してスリム化する余地はあります。私自身は賃貸住まいのため契約が必須で、悩む間もなく継続となりました。
自動車保険
交通事故の賠償額も億単位の額になる場合もあります。ここを資産で払うのはリスクが高すぎるので、特に対人・対物賠償は「無制限」で加入するのが安心だと思います。
【要検討・実録】「お宝」か「足かせ」か? 30年持ち続けた「年金保険」
ここからは、感情を排して電卓を叩いて判断すべき領域です。私自身、悩ましい保険を1本、手元に抱えていました。入社したばかりの頃、今からおよそ30年前に加入した「年金保険」です。
当時、オフィスにやってくる保険外交員のおばちゃんに「確定申告のときに生命保険料控除が使えるからお得よ」「若いうちに入らないと損よ」と笑顔で勧められるがまま、ハンコを押してしまいました。当時の私にタイムマシンで会いに行き、「そのハンコを下ろして、インデックスファンドを買いなさい!」と全力で説教してやりたい気分です。今振り返れば金融リテラシーのかけらもなかったと猛省しています。
その後、金融リテラシーがついた頃より「世の中の預金金利がこの1.5%を超えたら解約しよう」と企んでいました。しかし日本は長い低金利時代に突入し、解約するタイミングを見失ったまま、消極的な理由で30年間も持ち続けてしまったのです。
ところが最近、状況が変わってきました。財務省が発行する個人向け国債の「変動10年」は、2026年7月募集分で初回適用利率が年1.80%(税引前)まで上昇しています。つまり、予定利率1.5%の私の年金保険は、元本保証の安全資産という土俵で比較しても、すでに国が発行する国債に負けている可能性が出てきたということです。加入して30年間は「買ってよかった」と言えますが、満期まで残り数年をこのまま持ち続けるのは、正直「負け戦」だと感じています。解約控除(解約時の手数料)も含めて、真剣に見直す時期に来ました。
加えて、会社員時代は年末調整で生命保険料控除を受けられましたが、FIRE後で稼ぎがない場合は、そもそも控除できる対象もないため、「節税メリット」はゼロになる点も見落とせません。
死亡保障(生命保険)は相続対策としてなら継続もあり
これまで死亡保障は「自分が死んだら家族が路頭に迷う」という理由で入っていました。しかしFIRE後は、遺族は私が残した資産を相続して生活できます。生活費を補填するための大型保障は、もう不要というのが基本線です。
ただし、相続税対策として使うのであれば話は別です。生命保険の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」まで利用できるため、たとえば子どもが2人いる場合は合計1,000万円分を一時払いの生命保険に入れておく、という使い方はありだと思っています。
【子育て世代向け】教育資金はジュニアNISAか?学資保険か?
私自身に子どもはいませんが、よく話題にあがることが多いテーマなので、客観的な視点で整理しておきます。
2024年以降、既存のジュニアNISA口座は18歳前でも遡及課税なく払い出せるようになりましたが、一部だけの引き出しはできず、口座内の資金をすべて払い出して口座を閉鎖する必要があります。「進学のタイミングで30万円だけ欲しい」といった柔軟な取り崩しには対応できないのが実情でしたので、学費は別途貯める必要がありました。
しかし、この不満を解消する新制度がいよいよ動き出そうとしています。2025年12月の税制改正大綱に、未成年向けの「こどもNISA」創設が盛り込まれ、早ければ2027年1月開始の見込みです。年間投資枠60万円・非課税保有限度額600万円で、18歳になれば成人向けNISAへ自動的に引き継がれます。最大の変化は払い出しルールで、12歳未満は原則不可なものの、12歳以降は子どもの同意書類などを条件に「一部払出し」にも対応する方向で検討されています。
ただし現時点ではまだ「予定」の段階で、詳細な手続きは今後確定していきます。学資保険には契約者に万が一のことがあった際の「払込免除特約」という、NISA系にはない保障機能もあるため、投資効率だけで全振りせず、保障面も含めてバランスを考えることをおすすめします。
さいごに
FIRE達成者にとって、民間保険の多くは「自分よりお金を持っていない保険会社に、手数料を払ってお金を預けている状態」になりがちです。今回の見直しで整理した考え方を、あらためてまとめます。
- 医療保険・がん保険・就業不能保険は、高額療養費制度と自家保険で受け止められるので即解約でよい
- 個人賠償責任保険・火災保険・自動車保険(対人対物無制限)は、資産を一撃で失うリスクに直結するので継続必須
- 貯蓄型保険は、予定利率と今の個人向け国債の利回り(2026年7月募集分で1.80%)を電卓で比較して判断
- 教育資金は、2027年開始予定の「こどもNISA」で払い出しの柔軟性が上がる見込みだが、保障面では学資保険も選択肢に残す
「数千万円〜億単位の損害賠償リスク」だけを保険でカバーし、それ以外の「数百万円程度で済むトラブル」は資産で受け止める。この方針で固定費を極限まで削り、その分を人生を楽しむ費用や再投資に回していくのがおすすめです。
早期リタイア(FIRE)前後に考えるべきことは、こちらの記事にもまとめています。あわせて参考にしてください。
PS
皆さんはFIREやリタイアを機に、どの保険を残し、どの保険を解約されましたか? 昔入った貯蓄型保険をどう処理したかなど、ぜひコメント欄で教えてください!
早期リタイア(FIRE)時に考えることを以下の記事にまとめました。ぜひ参考にしてください




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