著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
「FIREしたこと、周りの人にどこまで話していますか?」
達成できた嬉しさも、今の暮らしの楽しさも、本当は誰かに話したい。でも、妬まれたり関係が壊れたりするのが怖くて言えない……そんな葛藤を抱えている方は、意外と多いのではないでしょうか。
先に結論から言うと、FIRE報告の正解は、「全員に話す」か「全員に隠す」かの2択ではありません。 相手との距離感に合わせて伝える内容を変える「報告のグラデーション」をつくることが、自分と家族の平穏を守る近道だと私は考えています。
この記事では、退職に関する2つのアンケートデータの比較や、私が大企業を退職した際の実体験を交えながら、誰に何を伝えるべきかの明確な基準をお伝えします。
なぜ退職時に本音を隠すのか?「一般退職」と「FIRE退職」の比較データ
世間一般でいう退職と、早期リタイアでの退職。一見まったく違うもののように思えますが、実はどちらも「本音を話さない」という点では共通しています。
たとえば、全国退職者支援会の調査では、一般の会社員が退職時に本音を隠す割合は約8割にのぼります。
一方で、私が所属するコミュニティ「FIRE研究所」が実施した35名対象のアンケート(うちFIRE達成者20名)を見ると、同僚や親戚に伝えた人はごく少数でした。伝えた相手の1位は友人(11名)、次いでネット・兄弟・親(各7名)。しかも、回答者全体の22%が、実際に伝えて後悔していたようです。
2つの調査は対象も質問内容も異なるため、数字を単純には比べられません。しかし「どちらも本音を話さない人が多い」という共通点に注目しています。
私自身はどちらかといえばオープン派で、友人には普通にFIREしたと伝えていました。コミュニティでのオンライン飲み会で「本当は誰かに言いたいけれど言えない」というメンバーのリアルな本音を聞いて、「そういうこともあるのか」と考えさせられました。
自分がオープンだからといってそれが正解ではなく、世間では「言いたくても言えない葛藤」を抱えている人が大半なのだと気づかされたのです。
また、ゴールデンウィークに地元の友人に会社を辞めたと伝えた際、「本当に実行したのか」とひどく驚かれました。私のブログを見せても「FIREって何?」と言われてしまい、一般社会との認知度の壁やズレを痛感しています。
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FIRE達成者が本音を伏せる2大心理:「資産バレ」と「無職の世間体」
なぜFIRE達成者は本当のことを話さないのでしょうか。そこには大きく2つの軸があると考えています。
1つ目は「資産バレのリスク回避」です。
働かずに生きていけるだけのお金があると思われると、妬まれたり、投資話を持ちかけられたり、最悪の場合はたかられたりするリスクが生じます。
2つ目は「無職を伝える心理的抵抗感」です。
日本の社会通念上、「働いていない(無職)」と告白することに対する世間体や、一種の後ろめたさを感じる人は決して少なくありません。
伝えて後悔した22%の教訓:「嫉妬」と「資産額開示」の罠
「それでも、オープンにした方が隠し事もなく気楽なのでは?」と思うかもしれませんが、伝えたことへの後悔を聞くと、「後悔なし」が66%、「後悔あり」が22%でした(残り12%は無回答です。割合はいずれも回答者全体に対するものです)。
後悔なしの方は、「必要最低限の相手に絞った」「この人なら大丈夫と思えた人にだけ伝えた」という声が目立ちます。後悔ありの声は、次の3つです。
- たまにしか会わない親戚に伝えて、心配をかけただけだった
- 資産額をはっきり言ってしまい、資産の少ない相手に気の毒なことをした
- それまで親しかった一部の人から、嫉妬や軽蔑を向けられ、関係が壊れた
これらの後悔の多くは、『相手の価値観やマネーリテラシーに合わない開示』をしてしまったことが原因です。 だからこそ、相手との距離感に応じた伝達が必要になります。
後悔の分かれ目は、伝えたかどうかより「誰に、どこまで」伝えたかです。ここから、報告のグラデーションが見えてきます。
【実録】会社・友人・義実家はどう対応した?28年勤めた著者のリアルな立ち回り
それでは、具体的にどう対応すればよいのでしょうか。
相手との関係性やリスクに応じて、報告内容を4つのレイヤーにグラデーション配置するのがおすすめです。
ここでは、私が28年勤めた大企業を早期退職し、FIRE生活に入る際に実践した立ち回りをご紹介します。
会社・上司:A4ペラ1枚の計画書で割増15ヶ月分
私の会社の早期退職制度は、再就職支援会社のサポートを受けるか、自分で退職後の計画を立てるかを選ぶ仕組みでした。
完全FIREする気満々だった私は、就業時間中に「退職後の計画書」を作成して提出しました。中身は前向きな作文です。私の会社の制度では前向きな作文をA4ペラ1枚にまとめただけで割増退職金(給与の15ヶ月分)がしっかり上乗せされたので、会社と無用な摩擦を起こさずに権利を行使するうえで非常に有効な手段でした。 会社に正直に「FIREして遊んで過ごします」なんて言う必要は一切ありません。
仲間・友人:信頼できる相手にはオープンに
移住とFIREを同時に決行し、一時期「妻以外と喋らない孤独」に直面した経験から、何でも話せるサードプレイス(居場所)の重要性を痛感しました。
とはいえ、マネーリテラシーや価値観が全く異なる相手に話しても理解されず、関係がぎくしゃくするだけです。信頼できる友人や、お互いを高め合えるコミュニティの仲間に限定してオープンにするというメリハリが大切になります。
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義理の実家:妻の意向を最優先して「完全リモートワーク」を通す
妻には「健康な夫が毎日家にいるという事実を、義両親が受け止めきれないかもしれない」という懸念がありました。
価値観が大きく異なる高齢の世代に「仕事をしていない」と伝えても、無用な心配をかけるだけです。妻への配慮として、義実家には「完全リモートワーク設定」の嘘(方便)を突き通しています。嘘といえば嘘ですが、妻のストレスを減らすための夫婦の連携プレイ、つまり方便です。
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【実践】相手の距離感で使い分ける「報告の4つのレイヤー」
親や義実家、古い知人に対して「本当のことを言わないのは嘘つきで後ろめたいのではないか」と悩む必要はないと思います。
価値観が異なる相手に正直にFIREを伝えても、相手を困惑させたり無用な心配や嫉妬を生むだけです。自分と大切な家族の日常を守り、相手にも余計な波風を立てないための「思いやりのある建前」こそが、大人の社会人としての知恵だと私は考えています。
1. 会社・上司:【建前100%】円満退職と権利確保を最優先
「やりたいことがある」という前向きな理由で押し通し、引き止めをかわして円満に去りましょう。退職金などの権利をしっかり確保することが最優先です。一般の退職でも建前の1位ですから、角の立たない定番の理由です。
2. 義理の実家・親族:【妻ファースト】で家庭の平和を守る
配偶者の意向を尊重し、無理に開示せず「働いている体」を保ちます。たまにしか会わない親戚は、心配をかけないことも大事です。
3. 一般の友人・知人:【基本ぼかす】無難な肩書きで
(※ここでいう「一般の友人・知人」は、お金の価値観をよく知らない相手のことです。)
嫉妬や金銭トラブルを防ぐため、「Webの仕事をしている」「フリーランスで働いている」等で濁し、資産バレのリスクを回避しましょう。
4. 信頼できる仲間・コミュニティ:【本音100%】サードプレイスで共有
コミュニティ仲間や、マネーリテラシーのある友人など、価値観を共有できる相手には本音で語り合いましょう。ここがFIRE後の大切な心の拠り所になります。
ただし、資産額の具体的な数字までは、仲間にも話さないのが無難です。 先ほどの後悔の声にもあったように、金額を伝えると、相手との差が気になって関係がぎくしゃくすることがあるためです。
さいごに
この記事では、FIREしたことを周囲にどう伝えるかという葛藤について、データや私の実体験を交えてお伝えしました。
ポイントを振り返ると以下のようになります。
- 世間一般の退職もFIRE退職も「本音を隠す」のが多数派である
- FIRE達成者が隠す理由は「資産バレのリスク回避」と「無職を伝える心理的抵抗感」
- 正直に伝えて後悔した人が22%もいるという事実を忘れない
- 全員に言う・言わないの2択ではなく、相手に応じて「4つのレイヤー」で使い分ける
- 建前は、必ずしも嘘をつくことではなく、自分と家族の平穏を守るためのしなやかな「リスク管理」である
「周囲に言えない」と悩む必要はありません。ご自身のペースと心地よい距離感で、自分らしいFIRE生活を楽しんでいきましょう。
PS
最後に、皆さんにお聞きします。FIREした(する)ことを、周囲にどこまで伝えましたか? 会社、友人、親、義実家など、相手ごとの違いがあれば、ぜひコメント欄で教えてください!





コメント
私の経験をお話しさせていただきます。
1.退職した会社
辞めるのを惜しんでくれたため、①会社への不満ではなく前向きな理由で退職すること、②(聞かれたので)資産額、を伝えました。今後の接点はないため後悔はありません。
2.友人A
「今何してるの? 仕事紹介しようか?」と親身に心配してくれたため、「FIREできる資産があり問題ない」と伝えました。しかし、その友人を経由して周囲に広まってしまい、伝えたことを後悔しました。
3.現在の対応
友人Aの件があってからは、親族も含めて、誰に対しても話さないようにしています。
あんみつさん、いつもコメントありがとうございます。
特に「友人A」様の件、非常にリアルで考えさせられますね……。
悪気や悪意がなく、むしろ親切心からの言葉だったからこそ、防ぎにくく厄介な「予期せぬ情報の漏洩ルート」になってしまうのが、FIRE民にとって最も怖いところです。
善意の拡散であっても、プライバシーが自分の手を離れて広がってしまうリスクの大きさが伝わってきました。
とても参考になるコメントをありがとうございました!