先日当ブログで行った読者アンケートでは、9割以上の方が全世界株式(オルカン) や米国株式(S&P500)のインデックス投資を積み立てているという結果になりました。
また、普通の個人投資家についても、新NISAの普及もあり、インデックス投資はもはや「常識」になりつつあります。
しかし、ふと疑問に思いませんか?
「みんなが同じ商品を買ったら、誰が株価を決めるんだろう?」
インデックス投資の強さの秘密は、アクティブファンドのプロたちが膨大なコストをかけて分析し決定した「適正価格」への「タダ乗り」にあります。私たちは分析コストを一切払わず、プロの成果に便乗することで利益を得ているのです。この構造については、先日の記事でも触れました。
しかし、インデックス投資家が増えすぎると、価格を決める人がいなくなってしまいます。今日は、この見過ごされがちなリスクについて詳しく解説します。
驚愕の事実:日本市場はすでにパッシブ比率57%
インデックス投資の比率はすでに50%を超えています。「それはアメリカの話でしょ?」と思った方、実は日本の方が深刻かもしれません。
投資信託協会のレポート(2024年3月公表)によると、ETFを含めて日本のパッシブ運用の割合は約57%に達しています。これは世界平均の50%を上回る水準です。
参考:投資信託協会 調査広報室レポート(2024年3月12日) 「インデックスファンドが席巻する日本の投資信託」
「パッシブ過半数」は日本の未来の話ではなく、現在の日本市場の現実です。
なぜ日本のパッシブ比率は高いのか?
理由は主に3つあります。
① 日本銀行による巨額のETF買い入れ
金融緩和策の一環として、日銀がインデックス型ETFを大量保有しています。
② 公的年金(GPIF)の運用
私たちの年金も、コストの安いパッシブ運用で管理されています。
③ NISAを通じた個人投資家の流入
私たち個人投資家も、新NISAを通じてインデックスファンドに資金を集中させています。
インデックス投資のデメリット:市場を歪める3つの副作用
近年の研究では、インデックス投資の比率が50%を超えると、市場の機能に深刻な影響が出ることが指摘されています。主な影響は以下の3つです。
参考:「Assessing the Impact of Passive Investing over Time」
① 価格変動の激化(ボラティリティの増幅)
インデックス投資は機械的に売買するため、「高すぎるから売ろう」「安すぎるから買おう」といった価格の変化に対する敏感さが失われます。
結果として、一度動き出すとブレーキが効かず、極端な急騰・急落を招きやすくなります。最近の相場の乱高下もこれが原因の可能性があります。
② 「適正な価格を決める機能」の麻痺
誰も企業の価値を測らなくなれば、株価は企業の「実力」ではなく、単なる「指数のルール」で動くようになってしまいます。
業績が良いから株価が上がるのではなく、「S&P500に入っているから上がる」という本末転倒な市場になります。
③ 巨大企業への資金集中と新陳代謝の停滞
インデックス投資は時価総額に応じて機械的に資金を配分します。すでに大きいGAFAMなどの巨大企業には、業績に関わらず自動的に資金が流れ込み続け、実力以上に株価が釣り上がります。
一方、まだ指数に含まれないスタートアップには資金が回りにくくなり、次の成長企業が育たなくなります。資本主義の根幹である「良い企業にお金が集まる」という健全な新陳代謝が止まってしまうリスクがあります。
グロスマン・スティグリッツのパラドックス:市場の自己調整機能
ここで、「グロスマン・スティグリッツのパラドックス」という1980年に発表された有名な経済学理論を紹介します。
参考:「On the Impossibility of Informationally Efficient Markets」
これは市場の効率性に関する逆説を説いたもので、簡単に言うと次のような理論です。
もし全員がインデックス投資家になったら、誰も企業の決算書を読まなくなり、株価は企業の実力とまったく無関係な数字になってしまいます。
しかし、そうなると明らかに割安な優良株と、明らかに割高なゴミ株が混在した状態になります。その時「割高な株を売って、割安な株を買う」だけでほぼ確実に儲けられるため、優秀な人材と資金が再び「儲かるアクティブ運用」に戻ってくるのです。
つまり、「情報を集めるコスト」と「情報を集めて得られる利益」が釣り合うポイントで、アクティブとパッシブの比率は必ず均衡する──これが市場原理というわけです。
私も「市場を壊す共犯者」なのか? アセットアロケーションによる「市場への貢献」
私も、長期投資の資産の多くはインデックスファンドを使っています。ということは、私も市場を壊す共犯者ということかもしれません。
ただ、個人的には「半分だけ共犯者」ではないかと考えています。
たしかに、個別企業の分析をせずにパッケージ商品を買っている点では、私も市場の価格形成に貢献していません。
しかし、「アセットアロケーション(資産配分)」に関しては、かなり動的に動かしています。
成否は一旦置くとして、私は1年程度の目線で「市場が高いから少し保守的にする」といった調整を行っています。
このリバランス(配分調整)は、市場の過熱を冷まし、暴落時には買い支える効果があるため、市場の健全化にも貢献していると考えています。
パッシブ全盛の「脆い市場」で、FIRE民が生き残るための生存戦略
前半で解説した通り、パッシブ比率が高まった現代の市場は、一見効率的ですが、ひとたびショックが起きると「全員が同じ出口に殺到する」という脆さを抱えています。
機械的なアルゴリズムが一斉に「売り」に傾いたとき、適正価格で買い支えてくれるアクティブ投資家が少なくってます。そのため、今まで以上のスピードと深さで、株価が暴落する可能性があります。
「インデックス投資こそ最強」という理論は、あくまで「市場が正常に機能している」ことが前提です。市場の歪みが極限に達したとき、全力投資をしていると、この「機械的な暴落」に巻き込まれ、資産を大きく毀損してしまいます。
特に私のようなFIRE民にとって、価格変動の拡大は「資産寿命」を縮める致命傷になりかねません。
資産2億円FIRE民のポートフォリオ
では、具体的にどうしているのか。
攻めの資産(株+その他リスク資産)と守りの資産(債券)の比率を決める
私の場合は、まずは、大きく攻めの資産と守りの資産の割合を決めます。
やり方は、「110 – 年齢(%)」でベースの割合を決めて、「市場の過熱感」で調整します。
具体的には、「110 – 53歳 = 57%」を基準とします。現在は高値圏であると判断し、そこから例えば15%減らし、「42%」を攻めの資産に設定しています。
そのうえで、各資産を以下の割合(固定)でリバランスしています。
①株式
比率 = 国内:先進国:新興国 = 3:6:1
あえて日本株(国内)を3割入れています。
「全世界株式インデックス」の日本比率は5%程度ですが、国内で生活している以上、あえて「ホームバイアス(自国の資産を多めに持つ)」をかけています。
これは、為替リスクを抑えつつ、日本円で生活するFIRE民としての生活防衛力を高めるためです。先進国6割で成長を取り込みつつ、新興国1割で爆発力も少し残す──これが私の最適解です。
②債券(守りの資産)
比率 = 基本は「国内債券」(一部海外もありますが・・・)
基本的に、為替の影響を受けない債券がメインです。
海外債券を入れない理由は、為替リスクに見合うだけのリターンがないと判断しているからです。為替リスクをとってまで利益を狙うのであれば、よりリターンの高い海外株式で十分だと考えています。
③その他(分散対策)
比率 = 国内リート:海外リート:ゴールド = 1:1:1
株式とも債券とも違う動きをする「オルタナティブ資産」です。分散効果を狙って攻めの資産の一部として採用しています。
最後に:私たちインデックス投資家がすべきこと
現在、インデックス投資の比率は上昇中です。
先に述べたように、比率が高まると「価格変動の激化」が起こりやすくなります。何かのイベントが起これば、今まで以上に急落(もしくは暴騰も)する可能性が出てきます。
パッシブ比率が高い相場では、ボラティリティが昔よりも激しくなる可能性があります。
暴落時に狼狽売りしないよう、投資用資産の中にも「現金クッション」や「債券」を多めに持っておくのがおすすめです。




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