著者:モンチ(投資歴25年・運用資産2億円/インデックス×社債で完全FIRE)
最近、SNSやニュースで「NISA枠が売却した年のうちに復活する」という話題を見かけて、気になっている方も多いのではないでしょうか。「これで暴落時のリバランスがやりやすくなる」「スイングトレードもできそう」と歓迎する声もたくさん見かけます。
確かに、制度が改善されて使い勝手が良くなること自体は素晴らしいニュースです。しかし、FIRE民の私の視点から言うと、「私たちのようにすでにNISA枠に毎年満額投資しているFIRE民にとっては、実はあまりありがたみがない」というのが本音です。
なぜなら、大きく育ったNISA口座を安易に売買してしまうと、将来の非課税メリットを自ら縮小してしまうリスクがあるからです。
この記事では、現在進行形で資産を守りながら運用しているFIRE達成者のリアルな視点から、今回の税制改正要望に隠された数字のロジックと、FIRE民にとっての正しい活用法について、数字を使いながらお伝えします。
先に結論からお伝えすると、以下の3点です。
結論を先に言うと
- NISAの非課税枠は「簿価(買った時の値段)」で管理されるため、育った資産を売ると非課税枠そのものが縮んでしまう
- FIRE民の正解は「期待リターンが一番高い資産で1,800万円の枠を埋めて、あとは放置」
- リバランスや国債投資は非課税枠を使わず、特定口座で行うのが手取り最大化の鉄則
それでは、今回の税制改正要望で何が変わろうとしているのか、まずは制度の中身から見ていきましょう。
【2027年税制改正】新NISA枠が「当年中復活」に?制度の仕組みと注意点
先日、金融庁が「令和9(2027)年度 税制改正要望」の中で、NISA口座で商品を売却した場合の非課税枠について、現行の「翌年に復活」という仕組みを「売却した当年中に復活」させる案を盛り込んだというニュースが、時事通信などで報じられました。
※参考:時事通信のニュース|企業の成長投資を促進 子育て、賃上げ支援も―来年度税制改正要望
ニュースやSNSで話題になっているのを見て私も気になり、実際に金融庁が公表している改正要望の資料を読んでみました。
現在、新NISAの非課税枠(1,800万円)は、保有商品を売却すると「翌年」に簿価(買った時の値段)ベースで枠が復活する仕組みになっています。今回の要望は、この復活タイミングを「売却した当年中」に早めようというものです。
※参考:金融庁の「令和9(2027)年度 税制改正要望について」の資料(PDF)
確かに「暴落時のリバランスがしやすくなる」と歓迎する声が多く、制度としては前向きな改善だと感じます。
とはいえ、現在進行形でリタイア生活を送っている身からすると、「NISA枠復活自体はうれしいが、これって我々FIRE民に本当に必要な機能なんだろうか?」という違和感を覚えたのが正直なところです。急な出費などでやむを得ず売却するケースには非常に便利な改善ですが、私たちの投資手法を根本から変えるような魔法の制度ではない、というのが私の結論です。
【シミュレーション】新NISA枠復活でリバランスすると大損?FIRE民にありがたくない理由
なぜ、NISA枠の当年復活がFIRE民にとってありがたくないのか。それは、大きく育ったNISA資産を売却してしまうと、非課税でリターンを生むベースが小さくなり、将来的な機会損失に繋がってしまうからです。
簡単なシミュレーションをしてみましょう。
たとえば、あなたが1,800万円の枠をきっちり埋め、順調に運用を続けて10年後に「3,000万円」に膨らんでいたとします。そのまま置いておけば、この3,000万円に対してのリターン(例えば、年利5%のリターンなら150万円)が丸々非課税で増え続けます。NISA枠で膨らんでいた分も今後リターンを生むという、最強の複利マシーン状態です。
しかし、ポートフォリオのリバランスのために、この3,000万円を一旦全額売却したとしましょう。
手元には利益を含めた3,000万円が非課税で残りますが、NISAの非課税枠はあくまで「買った時の値段(簿価)」で管理さるため、売ってしまうと復活するのは買った時の値段である「1,800万円分」の枠だけです。
これを再び買い直したとしても、以降は1,800万円に対するリターン(例えば、年利5%のリターンなら90万円)しか非課税になりません。残りの1,200万円は特定口座など課税口座で運用せざるを得ず、利益に対して約20%の税金がかかってしまいます。
つまり、NISA枠を安易に売却すると、非課税で資産を増やせるパワー(雪だるまの土台)を自ら放棄してしまうことになるのです。
なお、ここではわかりやすさを優先して「1,800万円分を売って、そのまま1,800万円分を買い直す」という前提で計算しましたが、実際に非課税で買い直せるのは、年間投資枠(成長投資枠+つみたて投資枠の合計360万円)の範囲内までという点にはご注意ください。
FIRE達成者の新NISA活用法:1,800万の非課税枠は「放置」が正解
こうした数字のロジックを踏まえると、運用資金が潤沢にあるFIRE民にとって、NISA枠の活用法は極めてシンプルになります。
期待リターンが一番高い全世界株式などの「コア資産」で1,800万円の枠を真っ先に埋めきり、あとはひたすら放置してさわらない。これが一番手取りを最大化できる最適解です。
非課税という最高の条件が整った箱には、一番大きく育つ資産を入れっぱなしにして複利の力を効かせるのが、数学的に見ても理にかなっています。
そして、生活費が必要になったら、まずは特定口座から取り崩していくのが基本です。NISA口座の資産を売るのは、他の資産が尽きた「最後の最後」にすべきタイミングだと私は考えています。
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具体的な取り崩しの順番や、税金・社会保険料を最安に抑える出口戦略については、以下の記事を参考にしてください。
暴落時のリバランスや個人向け国債は「特定口座」で行うべき理由
「じゃあ、株式の比率が上がりすぎた時のリバランスはどうするの?」と思うかもしれません。
それについては、潤沢にある特定口座内でバランスするのがいいのでは?というのが私の結論です。
特定口座であれば、含み益の調整や、年末の「損出し」による税金コントロールなど、柔軟な対応が可能です。大切なNISA枠を消費してまでリバランスを行う必要はありません。
また、今回の税制改正要望には「個人向け国債のNISA対象化」という話題も含まれていました。
しかし、これも基本的には「1,800万の枠をリスク資産だけで埋められない(枠が余っている)人向け」の措置だと考えています。すでに資産のベースがあるFIRE民が、期待リターンの低い国債をNISA枠で買わないのがセオリーです。
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この国債とNISAの相性については以下記事にまとめています
まとめ
今回は、2027年の税制改正要望で注目されている「NISA枠の当年中復活」について、FIRE達成者の視点から考察しました。要点は以下の通りです。
- 枠の復活は「簿価(買った時の値段)」ベースなので、育った資産を売ると非課税の雪だるまが小さくなる。
- リターンが一番高いもので枠を埋めてさわらないのが、手取りを最大化する鉄則。
- リバランスや国債への投資は、NISA枠ではなく「特定口座」で行うべき。
制度が便利になるニュースは魅力的ですが、自分の投資フェーズ(これから資産を築く形成期なのか、すでに資産を守るFIRE後なのか)によって、制度の「使いどころ」は全く変わってきます。世間の流行りやSNSの盛り上がりに流されず、冷静なシミュレーションで自分にとっての手取り最大化を見極めていきましょう。
PS
皆さんは今回の「NISA枠復活」のニュースを見て、ご自身の投資戦略をどう調整しようと考えていますか?「自分はこう活用するつもりだ」「やっぱり放置が一番だよね」など、ぜひコメント欄で教えてくださいね!




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