どうせ投資するなら、できるだけ税金は払いたくないですよね。
そんなときに頼れるのが、NISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)。
どちらも資産形成を応援してくれる税制優遇制度ですが、実はその「仕組みの違い」が、FIRE民にとってはちょっとした落とし穴になるかもしれません。
NISAとiDeCo、ざっくり違い
- NISAは、誰でも使える「資産形成のための非課税制度」。運用益が非課税で、いつでも引き出せるのが魅力です。
- iDeCoは、私的年金の位置づけ。原則60歳まで引き出せず、職業によって掛け金の上限も違います。
どちらも「運用益が非課税」というイメージが強いですが、iDeCoは受け取り時に税金がかかる可能性があるという点に注意が必要です。
iDeCoの罠:元本にも税金がかかるって本当?
「iDeCoは非課税でお得!」というイメージ、ありますよね。私も最初はそう思っていました。運用益が非課税になるなら、やらない理由はない…と。
でも、実は受け取り時に“元本”にも税金がかかる可能性があるって知ってましたか?
これ、かなり衝撃です。
非課税なのは“運用中”だけ
iDeCoの税制優遇は、以下の3つのタイミングで発揮されます。
- 積立時:掛け金が全額所得控除(=課税所得が減る)
- 運用時:運用益が非課税(=通常20.315%の税金がゼロ)
- 受取時:退職所得控除 or 公的年金等控除が使える(=課税額を減らせる)
このうち、運用時の非課税は確実にメリットがあります。問題は受取時です。
元本にも課税される仕組み
iDeCoの受け取りは「退職所得」または「雑所得」として扱われます。ここで使える控除がなければ、受け取った金額全体が課税対象になります。
極端な例ですが、
- 元本:1,000万円
- 利益:10万円
- 受取額:1,010万円
- 控除枠:ゼロ(退職所得控除を使い切っている)
この場合、1,010万円すべてが課税計算ベースになります。利益だけじゃなく、自分が積み立てた元本にも税金がかかってしまうようです。
「え?それって、税金とられ損じゃない?」と思いますよね。でもまさにその通りみたいです。
なぜこんな仕組みなのか?
iDeCoは「積立時に税金を軽減する代わりに、受け取り時に課税する」という設計です。
つまり、
- 掛け金を払うとき → 所得控除で税金が減る
- 受け取るとき → 控除枠を使って課税額を減らす
この“前借り型”の税制優遇が基本なんです。
でも、FIRE民のように収入がない=所得控除が使えない、かつ退職金で控除枠を使い切っている場合、受け取り時に税金だけがかかるという「損な構造」になってしまうんです。
FIRE民はiDeCoをやるべきか?
サラリーマンの場合、給与やボーナスなどの所得があるため、iDeCo積立時に所得控除の恩恵を受けることができます。しかし、FIRE民は収入がないため所得控除が使えないなどのデメリットが発生します。
大きく考えると、FIRE民にとって以下のようなリスクがあります。
- 所得控除が使えない(FIRE後は収入がない、もしくは極端に少ない)
- 退職所得控除も使い切っている(退職金で消化済み)
- 受け取り時に控除枠がないと、元本にも課税される
つまり、税制優遇の恩恵を受けられず、税金だけがかかる可能性があるということ。
これが、FIRE民にとっての「iDeCoの罠」なのです。
受け取り時の控除をどう確保する?
iDeCo最大のメリットは「掛け金の所得控除」ですが、FIRE民は収入がないためこの控除が使えません。では、受け取り時の税金をどう抑えるか?ここが重要なポイントです。
まず、年金形式で受け取る方法ですが、これは公的年金等控除の枠を使うことになります。ただし、この控除枠は公的年金と共通なので、すでに年金を受け取っている場合は、iDeCo分の控除枠がほぼ残っていないことも。
つまり、年金形式では控除枠を確保しづらく、課税される可能性が高いということです。
そこで注目したいのが、一括(一時金)形式での受け取りです。
iDeCoを一時金で受け取る場合、「退職所得」として扱われます。FIRE時にもらった退職金で退職金控除額を全て使ったとしても、その後のiDeCo積立期間に応じて、また控除枠が積み上がっていきます。
具体的には:
- 積立期間が20年以下 → 40万円 × 年数
- 積立期間が20年超 → 800万円 + 70万円 ×(年数 − 20)
つまり、55歳で退職金で控除枠を使い切っていても、65歳までiDeCoを続けることで新たな控除枠として、400万円(40万円x10年)が再構築されるというわけです。
私の場合は?
私は53歳でFIREし、退職所得控除を使い切りますが、その後にiDeCoをスタートするつもりです。
そこから70歳までの17年間、iDeCoを継続した結果すると仮定して、
- 控除枠:40万円 × 17年 = 680万円
この控除枠を使えば、680万円までの受取額は非課税になります。
iDeCoでの投資を年利4%で運用すると仮定すると、年間28万円ほどの掛け金であれば、元本+利息で680万円に収まりそうです。
つまり、年28万円の積立であれば、非課税運用が可能というわけです。
結論:FIRE民でもiDeCoは使える、ただし戦略が必要
iDeCoは「税金ゼロで運用できる夢の制度」ではありません。FIRE民にとっては、控除が使えないことで損をする可能性もあるのです。
でも、受取方法や積立期間を工夫すれば、非課税で運用する道もあることがわかりました。
FIRE後の資産形成、税金との付き合い方はとても大事。iDeCoを使うかどうか、ぜひご自身のライフプランに合わせてじっくり考えてみてくださいね。
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