前回の記事では、個人の資産形成における守り方として、満期を均等に分散させる「ラダー戦略」について書きました。金利予測が不要で、定期的に資金が戻ってくるラダー型は、多くの人にとっても使いやすいのではないでしょうか。
しかし、投資の目的は人それぞれです。
- 「子供の大学入学に合わせて、確実に資金を用意したい」
- 「リスクをとってもいいから、市場平均以上のリターンを狙いたい」
こうした具体的なニーズがある場合、ラダー戦略よりも適した戦略が存在します。
それが今回の記事にする「ブレット型」と「バーベル型」です。
今回は、この2つの戦略の特徴と、どのような人が採用すべきかについて解説します。
ブレット型運用(Bullet Strategy)
まず紹介するのは、ブレット戦略です。文字通り銃弾(Bullet)のように一点集中でターゲットを狙う戦略です。
どんな戦略か?
ブレット型とは、「特定の年限(満期)の債券に資金を集中させる」手法です。
例えば、「すべての資金で10年後に満期を迎える債券だけを買う」といった状態を指します。これは、一気に10年満期の債券を買うのもいいですし、10年後をターゲットにして償還期限のことなる債券を分割して買うのもありです。
メリット:将来の出費に完璧に合わせられる
この戦略の最大の強みは、「使う時期が決まっているお金」の運用に最適だという点です。
- 教育資金:7年後に子供が大学に入学するから、7年後に償還される債券で揃える
- 住宅購入:5年後に家の頭金を払いたいから、5年満期の社債を買う
ラダー型のように毎年お金が戻ってきても、すぐに使う予定がなければ再投資の手間がかかります。しかしブレット型なら、「お金が必要なその日」に、最大の金額(元本+利子)がドカンと戻ってきます。
途中売却をせず満期まで持ち切ることが前提となるため、保有期間中の債券価格の変動を気にする必要もありません。
デメリット:資産の固定
- 特定の時期に資金が戻る:満期が集中するため、その前後の期間はお金が拘束されます(流動性が低い)
バーベル型運用(Barbell Strategy)
次に紹介するのは、バーベル戦略です。重量挙げのバーベル(Barbell)のような形をした戦略です。
どんな戦略か?
バーベル型とは、「短期債券」と「長期債券」の両端だけを持ち、中期(3〜7年など)を一切持たない手法です。
- 資産の50%:期間1年以内の超短期債
- 資産の50%:期間20年などの超長期債
このように、極端な期間の債券を組み合わせます。
メリット:流動性と収益性の「いいとこ取り」
一見バランスが悪そうですが、実は理にかなった攻撃的な戦略です。債券投資の投資信託などのプロ方もよくやる運用です。
短期債(重りの左側):すぐに満期が来るため、「流動性」が高く換金しやすい。金利上昇時にはすぐに高金利な債券へ乗り換えられます。価格変動リスクもほぼありません。
長期債(重りの右側):利回りが高いため、ポートフォリオ全体の「収益」を稼ぎ出します。また、金利が低下した時には価格が大きく上昇するため、満期を待たずに売却することでキャピタルゲインも狙えます。
「守りの短期」と「攻めの長期」を組み合わせることで、金利が大きく動く局面ではラダー型以上のパフォーマンスを出せる可能性があります。
デメリット:管理が難しく、ボラティリティが高い
- 値動きが激しい:長期債を多く持つため、金利上昇時の価格下落幅はラダー型より大きくなります
- リバランスが面倒:短期債はすぐに満期が来るため頻繁な再投資が必要ですし、長期債の期間が短くなってきたら売却して入れ替えるなど、こまめなリバランスが必須です
まとめ:3つの戦略、あなたに合うのは?
最後に、前回紹介したラダー型も含めて比較表を作成してみました。
| 戦略 | 特徴 | 向いている人・目的 |
|---|---|---|
| ラダー型 | 満期を均等に分散 | 【万人向け】 安定重視。金利予測をしたくない人。 定期的な収入が欲しい人。 |
| ブレット型 | 特定の満期に集中 | 【目標がある方向け】 「〇年後に学費が必要」など、 お金を使う時期が明確に決まっている人。 |
| バーベル型 | 短期 + 長期 | 【積極運用したい方向け】 金利変動をチャンスに変えたい人。 手間を惜しまずリターンを追求したい人。 |
結論として、資産形成のベース(土台)にするなら、やはり「ラダー型」が最もバランスが良くおすすめです。
しかし、「5年後の住宅購入資金」のような明確なゴールがある資金については、その部分だけ切り出して「ブレット型」で運用するのは「あり」な選択だと思います。
また、投資経験があり、金利の動向を注視しながら積極的にリターンを狙いたい方には「バーベル型」が面白い選択肢となるのではないでしょうか。




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